Dinner is ready ! 来ぬ人を 待つ塩鮭の 夕餉かな(粗忽)

画像午後六時近くなってから、桃色の花びらを開いたクレオメ(Cleome)、またの名を西洋風蝶草(セイヨウフウチョウソウ)といいまして、学名はCleome hasslerianaであります。昼間、しぼんでいた昨日までの花びらが白い色ながら復活しまして、紅白そろい踏みのめでたさであります。いろんな角度で撮影してみますが、なかなかピントが合いませんし、手ぶれは起こるし、それでもきれいに撮れたものを探しまして、何とか掲載です。

これを庭いっぱいに植えてみたい気もいたします。

しかし、盛りは一週間くらいなものでしょうか。垣根にしておりますのは、キンモクセイなんですが、去年の秋のある日、突然かぐわしい芳香を放ちまして、家の者が近所の家が香水瓶を倒したよなどと言いながら帰宅しまして、ほんとだすごい匂いだね、これはトイレの芳香剤であろうか、などと噂し合いまして、なんと垣根のうっそうとした樹木が花を付けてみるまでは、とんとキンモクセイとは気付きませんでした。気が付いた時には、びっしりと花が付いておりまして、五日目くらいに雨が降って、花はすべて流れてしましました。キンモクセイとは、かような性質のものだったのでありますね。何年生きていようと、何回キンモクセイの香りを嗅ごうと、気が付かない間は気が付かないのであります。

    気が付かない者が、それまで気が付かなかったことに気が付くのは、難しいものであります。

画像何かにちゃんと気付くというのは、それなりの代償を払うなり、何かの幸運にめぐり逢ってのことのようです。実はそれまでも認識しているんでありますが、それがはっきりと意識されるのに、思いがけない時間を要することもあるわけですね。去年もサルスベリの花は見ておりましたが、つぼみが開くとどうなるかということは意識にものぼりませんでした。花弁が六枚、それが円周上に位置するなどと言うことは考えてもみませんでしたから、この場合はもう発見であります。

桃色の 雲とぞ見ゆる さるすべり(粗忽)

『百人一首』などと言うものは、もうすでに極め尽くされて、何か物を言う隙などないのだろうと思っておりましたけれども、むしろ逆でありますね。カルタになりまして、正月の遊びになったものですから、内容を考える前に身についてしまったりいたしますので、ある程度のお勉強で身につけますと、もはや既視感のみの存在であります。まさかそこに、理解できないこと、分からないこと、意味不明なことがあるとは思いはいたしません。実はそんなことは無くて、あの『万葉集』でさえ学問としてはこの100年で前進したはずですから、万葉仮名と呼ばれる漢字列の読解だって随分刷新されているのであります。私が大学で、和歌の解釈法を伝授されたことは前に申し述べましたが、その時の手法というのは、大変丁寧なもので、ただ概念やら理念を習ったのではなく、一語一句の解釈をしっかり扱うだけで主題が見えてくるようなものでした。簡単に言葉を補ったりしないで表現に即すというのは、実は研究者もないがしろな場合があるはずであります。こう言うと生意気でありますが、ここまでくればけっして言いがかりではないことでしょう。「霜が置く」「置く霜の」という表現などは、大問題でありますね。

    世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ 海人の小舟の 綱手かなしも(『百人一首』第93番・鎌倉右大臣)

鎌倉右大臣というのは、もちろん源実朝でありまして、鎌倉幕府の第三代の将軍でありますけれども、彼の人生というものが、私の頭の中でうまく像を結ばないところがあるようです。痛ましすぎて、なんだか目を背けているような気がいたします。そう言えば、和歌に関して遠い昔に学んだ時に、藤原定家についてはいろいろと問題になって耳にしたことがあまたあるんですが、源実朝のことはほとんど何の問題も聞いたことがないような気がするのであります。興味関心が乏しいものだから、聞いても意識にのぼらなかったのかも知れません。この歌についても、末句の「かなし」の意味が分かりませんし、初句・二句がその「かなし」とどういう関連があるのか、にわかに分かりかねるのであります。よく言うと、歌柄が大きすぎて私の手に負えないとも言えますが、悪く言うと、はったりがあるような気もするんであります。源実朝が中国に渡ろうと思って船を建造させたけれども、願いを果たせなかったという話を、堀田善衛さんの『定家明月記私抄』で読んだような気がいたしまして、その時の気分と一緒です。

    世の中は 常にももなか 甘い物(粗忽)    
     駄目よと叱る 綱手かなしも(粗忽)

   

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