He has earthly desires. 君が心やすまじとすらむ。(3)

随分前から本の処置に困っておりまして、気をゆるめるとどうでもよい本がたまりにたまるわけであります。本は増殖すると言ったのは、立教大学の教授を長らく務めて晩年は早稲田大学の名誉教授であった故井上宗雄さんだったかと思うんですが、ご本人の自宅は玄関の靴を脱ぐあたりに本が積んでありまして、さぞやお困りだったろうと思うんであり画像ます。そんな碩学とは比べようもない貧弱な蔵書でありますが、引っ越しの時にダンボール何箱も何箱もブックオフに運びましたが、本は減らないのであります。どうでもよい文庫本が押し入れにたっぷりとありまして、どう考えても死ぬまでに読み切れないこと間違いないのであります。

霰降り紅葉うつろう冬の庭(粗忽)

瀬戸内寂聴さんが訳した『源氏物語』を読み始めたのも、この講談社版10巻を処分しようと思って玄関に積んだことがきっかけでありまして、さすがに売ったら300円くらいだろうと思うと、忸怩たるものがあるわけであります。「忸怩」というのは「じくじ」と読むのでありますが、昔本を読んでいるとよく出て来る言葉でありました。ネットで調べると深く恥じることなんてまことしやかに書いてありますけれども、これは何となく格好いいだろうという本音の上でちょっと反省のポーズをかますような感じがあると思うんですがいかがでありましょう。本当はケチくそですから、10冊を5000円くらいで買った元を取りたいばっかりに、しっかり読んで売り払う算段をしているのであります。本当はこっぱずかしい気持と言うことなのであります。

   『田舎暮らしに殺されない法』(丸山健二著)を読みました。

どうやら、家族の一人が本屋で立ち読みをしまして、中高年の登山が盛んでありますけれどもしばしば天候の崩れで死者を出したりする事件がありますが、その答えが書いてあるということで買って来たようであります。ただし、買って来画像た時には答えが何だったか忘れてしまったようでありまして、気になってしょうがないけどなかなかその部分まで行き着かない、というような話でありました。なるほど、行き着かない理由も分かりましたが、私はすいすい読めてしまいまして、中高年登山の秘密も分かってしまったのであります。

朝日文庫、2011年5月30日刊。

これはまあ、田舎というものを知っている人による本でありまして、都会で勤め上げて田舎暮らしを楽しもうというようなのんきなお人好しの人物を、田舎で血祭りにされる前に救出しようという善意の本であります。人間というものは、どこかにユートピアがあって欲しいと思うわけでありまして、特に団塊世代向けの美味しい釣り文句に釣られて田舎にやって来る人に対して、まるで恫喝するような文体で叱りつけている本なのであります。だから拒絶反応を起こす人がいるんですが、タイトルを見て買って置いて拒絶するというのは鈍すぎるわけで、まともな人なら避けて通る書名でありましょう。普通の田舎は丸山健二さんの指摘の通りでありまして、過疎になって当然の側面があるわけです。だから、この本に書いてあることは、ちっとも過激でも過剰でも意地悪でも悪意があるわけでも何でもないのであります。ところで、中高年の登山が男女混合なのはどうしてなのか、そしてまた天気の変化でばたばた人が死ぬのは何故かという秘密については、読んでみて納得は行きました。天気の変化で死ぬというのは、私の家族が勝手に設定したものでありまして、丸山健二さんは単に登山にきた中高年の男女がはしゃぎすぎだと指摘しているんであります。単なる合コン、すなわち合同コンパであるという指摘です。私が考えるに、要するに舟木一夫の『高校三年生』という歌謡曲のノリで登山しているのでありますね。

   『源氏物語』第38帖「鈴虫」の巻。罪深い光源氏。

二年前に出家してしまった女三の宮でありますが、そのまま六条院に留まっているわけで、里帰りしようにも帰る当てがないのかも知れないのであります。光源氏としては還俗させようといろいろなだめたのかも知れず、妥協して女三の宮の寝室のあたりを念仏堂に模様替えして、これからはあまり近付かないように決めたのかも知れません。父の朱雀画像院は別居を勧めて三条の宮と言うところを改築して手配を整えているようでありまして、保護者の二人が女三の宮の綱引きをいたします。このあたりは光源氏が意地を張っているのか、朱雀院がいつまでも過保護なのか、実は読み切れないような気がします。

刈り込まれ色を失う冬の庭(粗忽)

光源氏は女三の宮に未練たらたらでありまして、念仏堂に籠もるのを残念だ、来世は極楽の蓮の上に一緒にというような歌を詠むんですが、本当はそんな気がないくせにといなされてしまいます。秋になると庭のあたりまで手を入れて野原のようにしたということでありますが、その頃になっても光源氏は女三の宮の出家を許さないようなことを言って、若い女三の宮を困らせるのであります。本当は密通したことを根に持っているのに、表面は取りつくろうと見抜かれておりまして、どうやら周囲に密通の件を知られたくないばっかりの執着のようなんであります。こうなると見苦しさを通り越しまして、醜悪な感じが出て来てしまうのであります。どうやら原作者・紫式部はこの主人公を嫌いのようでありまして愛想を尽かしているような雰囲気なのであります。八月十五夜の月が昇る中、庭の鈴虫を鑑賞するために人々が参上しますが、勢い余って冷泉帝のところに押しかけて行くのであります。

   後半のところでぎょっとするような話が出て来ます。   

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