Wandering about a foreign country.十五分の面会後。(8)

今年は3月6日が「啓蟄」になっておりまして、年によって5日だったり6日だったするわけであります。日本を代表する辞書と言えば『広辞苑』でありますが、その『広辞苑』(第四版)には、最初にカッコつきで「蟄虫、すなわち冬ごもりの虫がはい出る意」と解説してあるのであります。あれれ、と不思議に思いますのは「蟄居していた虫がひらく」というふうに解説しているわけで、開いて出てくるのは虫自身という解説であります。虫が主体になっているわけで、現代的な感覚では擬人法は当たり前でありますけれども、安易にそんな解釈をしていいのかどうかと思ってしまいます。例えば「啓蒙」という言葉を考えてみると、同じ『広辞苑』は「無知蒙昧な状態を啓発して教え導くこと」など画像と解説しているわけで、この場合自分自身が無知蒙昧で、それをもう一人の自分が教え導くとは到底考えられません。当然ながら無知蒙昧なAを、聡明なるBが教え導くはずでありまして、そこからの自然な連想では、「啓蟄」というのは蟄居しているAを、何らかのパワーにあふれるBが開放するという意味でなければならないはずであります。辞書なんてこんなものなのであります。

アジサイの葉っぱの新芽。

『広辞苑』(第四版)にいいところがあるとすると天体観測の知識が指摘してあることで、「二十四節気の一。太陽の黄経が345度の時で、陰暦二月の節。太陽の三月六日前後。驚蟄。季・春」と書いてあって、なぜ3月の5日とか6日とか揺れるのかという点に太陽の位置が関わることを示していて、それはそれで立派なんですが、ただし「啓蟄」を陰暦二月の節としたのは手痛いミスでありまして、たぶん啓蟄が一月になっているときは結構あるはずなんです。2015年や2016年は旧暦一月中に啓蟄が来る年でありまして、本当に辞書ってこんなものであります。この辞書はバブル期に盛んに新版を出しましたが、本当に内容的に必然性があったのかどうか、無かったはずでありまして、じゃあ何のためかはよくよく考えると分かったりしますが、揚げ足取りは止めておきましょう。当時は新語を採録したと盛んに言っていました。しょっちゅう新語を採用する採用すると言っては新版を出し続けていましたけれども、今は第六版まで出ているようであります。

バブル期というのは出版社にとっては我が世の春だったはずで、真面目な出版社は書物を出しました。

こういう時に頼りになるのは、小学館の『日本国語大辞典』でありまして、それの第二版の「けいちつ」の項目を引くとどういうことになるのか、ということであります。大は小を兼ねるということがありまして、この日本最大級の辞書をとりあえず引いてみることが大切なのでありましょう。余計なことを言うと、これの旧版を持参して北朝鮮の金日成書記長に表敬訪問した人がいたような気がしますけれども、それも遠い昔のことで、訪問した人から聞いただけのことですから、真偽のほどは詳しくは分かりません。無事に帰ってきたお土産として、朝鮮人参入りの石鹸を画像もらったような記憶があります。それはともかく、この辞書の四冊目の1266ページ二段目に出てまいりますが、漢字が「啓蟄・驚蟄」と二つ紹介されていまして、無知蒙昧を啓発されます。意味は三つ用意されておりまして、一番目が「冬ごもりの虫が地中からはい出ること。またその虫。蟄虫」と書かれておりまして、これでも「蟄=冬ごもり」を「啓=ひらく」のは虫自身という説明であります。へー、そうなんだ。本当に? 

アカバナユウゲショウの葉っぱ。

二番目の意味としては、「二十四気の一つ。陰暦二月の節気。太陽暦の三月五日ごろにあたる。季・春」とありまして、なんとなく『広辞苑』をそのまま引き写したことがバレバレであります。この辞書には、大きいことはいいことだという一面のほかに、他の辞書を包摂したという疑惑はあったはずであります。ここでも、啓蟄は旧暦二月に来ると書いていますが、こういうことを見逃すのは実は旧暦の暦なんか見たことがないからです。それはともかく、解説のところに書いてありますが、「啓蟄」が季語になったのは近代俳句からでありまして、高浜虚子からなんだそうでありまして、用例として引かれているのは昭和6年(1931)の「蜥蜴以下啓蒙の虫くさぐさなり」でありますから、案外新しい季語であるわけで、要するに旧暦・陰暦・太陰暦が用いられなくなって60年くらい経ってから、二十四節気を持ち出した俳人がいたということのようであります。お勉強になりました。三番目の意味としては、一番目から転じて「世に認められること」とありまして、なるほどでありますが特段の用例がなさそうなのにわざわざ掲示してありまして、不思議なことがあるものです。世に迎えられるということなら、本人が穴から出てくるのではなくて、本人を穴から誰かが出すということではあるまいかと思うのであります。

  暖かな陽気に迎えられて越冬した虫が外に出てくるということで良いでしょうか。季語になって80年。

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