Only I know all.ついに漱石『こころ』を読み通す(12)

どうやら今年は、積年のいろんな嘘が発覚して、世の中の見方をシニカルなものにシフトする必要のある年のようであります。別に世の中をのんきに眺めていたわけではなくて、いろんな事件を見てもなんだか他人事のような感覚でありまして、嘘や偽りが発覚してから、世の中が嘘や偽りに振り回されていた全貌を眺める有様なのであります。耳の聞こえない人の作曲した交響曲なんて聞いたこともないわけで、代作者が出て来て私が格安で作りましたと述べたらしいのであります。世紀の大発見らしい何とか細胞は、白い割烹着を着て研究したとかなんとか話題になりまして、画像が捏造らしいというところから嘘が発覚しまして、200回成功したのに、画像は切り張りで出すとはどういう所業なのか、200回嘘をついたの言い間違いなのかと驚いたのであります。そして、公娼制度が画像あった戦前に、慰安婦なるものがいてそれを強制連行したというファンタジーが朝日新聞によって否定されたんですが、実は自己否定したそうで、これまた不可思議な話であります。朝日新聞を信じて妄想を膨らませ、慰安婦像まで建てた人たちは立つ瀬がないことでありましょう。すべては泥流によって消滅であります。

セイヨウフウチョウソウの現在。

ここまで書いて思うのは、もし昨日の朝日新聞の紙面を見ていない人がいたら、私だってコテンパにけなされるはずでありまして、こちらの良識が疑われる事態なんですが、新聞紙面を見てみれば、もうなんだか終末気分の紙面なのであります。本を売りたい文筆家の嘘を、大新聞が報道して世論を形成し、それに勢いづいた外国が日本を責め立てまして、もうなんだか外交にも影響して大変になっていたんですが、今になってあれは検証したら嘘でございました、申し訳ございません、読者の皆様お気になさらず今まで通りのご愛読をと来るわけでありまして、どれくらい販売数が減るのか、心配する人と興味津々の人がいることでしょう。こりゃあ、後始末が大変そうであります。ただ、心配に及ばないのは、まともな人は新聞一紙で済ましてはいないはずで、複数見比べておりますから、とうの新聞社がりきむほど大問題ではないのであります。むしろ、謝って見せたのには何か裏がある、取引がある、圧力に屈したか、紙媒体のほうはなしにする気か、邪推したほうがまともであります。

  夏目漱石さんの『こころ』も下巻・「先生と遺書」、第55節も読了です。

さて、先生と言う人の遺書も残り少なくなりまして、先生の魂の彷徨の最終段階が報告されるのが第55節であります。要するに、友人「K」の自殺の真相を知るはずの下宿の未亡人が亡くなりまして、先生は妻と二人きりになったのであります。二人きりになってますます孤独感はつのりまして、それに比して生活は単調さを増したというような話なのであります。要するに、故郷の財産を始末してお金持ちになったため、就職する必要もなかったんでありますが、暇で暇で死ぬほど暇を持て余し、ろくでなしの友人の死をいつまでも胸の中で温めながら、自分が殺した画像とは妻には言えないで悶々していたということになるのであります。自分が不遇なのは友人の死に対する責任の重さに打ちひしがれていたからだと述べているわけで、半分くらいは当たっているんですが、半分は外れていることでしょう。この人は、故郷の叔父の娘、すなわちいとこと結婚したほうがなんぼか幸福だったわけで、下宿屋のお嬢さんはもう少し将来性のある男と思って結婚したのであります。

サルスベリが炎天下を彩ります。

第55節の最後のあたりで、先生は鎌倉で主人公と出会った日のことなどに話を及ぼしまして、出会ったころの気分がほれこの通りひどいものでしたと説明して見せているのであります。田舎から出て来て退屈な大学生活を送っていた主人公は、高等遊民の先生に引き寄せられまして、どんなにか理想的な知的生活を送る人かと期待したら、こんなことだとはらわたの奥まで引っ張り出して見せられたわけで、まことに気の毒な話なのであります。新潟を捨てた先生は、東京人の営む下宿屋に吸い寄せられたんですが、同じように地方から出て来て意味のない大学生活を送っていた主人公も、東京の高等遊民である先生に引き寄せられたというわけで、ここには近代の教育制度が孕む空虚な現実が顔をのぞかせております。東京人の漱石さんは、田舎から出てきた芸のない秀才が陥る陥穽と言うものに気が付きまして、その生態を書いたのでありましょう。英文学を志して英国留学を果たした漱石さんが、精神に異常をきたしたのも同じようなことなのかもしれないのであります。行ってみたら空虚な穴に吸い込まれそうになるのであります。

  そこに明治天皇崩御の報が入りまして、先生は奥さんに殉死したらと言われます。

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