The information was completely wrong.天下の誤報(4)

本棚をいくら探しても見つからない文庫本がありまして、たしか去年読んだものなのでありますが、もうブックオフに売ってしまったのかもしれません。何を探しているのかといいますと、寺田寅彦の『柿の種』という随筆でありまして、ちょうど関東大震災の頃のことが書いてあるのであります。寺田寅彦は地震なんかの研究者で、浅間山の観測所なんかを立ち上げた人でありますから、科学者の目で震災後の東京なんかを見て回っていることが書いてありまして、ある意味有名なエッセイのはずであります。驚いたのは、浅間山に自殺に来た女性を説得して、鬼押し出しの観測所の切符画像売り場を任せたということを語っていることで、そりゃあんまりな個人情報ではないかなどと思いました。その前後で面白いと思ったのは、地震関係の学者が浅間山に集合したんですが、学者がいつ来たとかいつ帰ったとかいう新聞情報がでたらめで、困ったもんだと嘆いたところであります。自分に身近な話題が出ると分かりますが、随分いい加減なレベルで記事が成立していることでありまして、それは今も変わらないことでしょう。

Lycoris(リコリス)=彼岸花属の黄色い花。

近ごろぼんやりと新聞を読んだり、ネットの記事を見ていて気になるのは、「国益」という言葉が出て来ることでありまして、「国益を損なう」という否定的な意味合いで使われていることであります。例えば、従軍慰安婦問題に関する朝日新聞の誤報問題を話題にして「国益を損なう行動だ」と非難するんでありますが、さて、新聞というのは国益のために発行していたのかどうか、そこのところがどうも筋違いの論評でありまして、馬鹿げているように見受けられるのであります。「国益を損なう」という言い方をつらつら考えると、「非国民」とか「売国奴」というような古めかしい言い方につながるような雰囲気でありまして、これがつながるなら、どこの誰が「国益を代表」した気になって、へまをした他人をつかまえて「国益を損なう」と発言するのか、ここが問題であります。「国益」に関わるのは、これは政府関係者であり、外交筋の人たちであり、有体に言えば外交官なのでありまして、ジャーナリズムは「国益」の代弁者であろうはずがないのであります。誰が民放や三大新聞に国益にかなう報道を期待するものでありましょう。「国益」というのは政権運営者の手に握られているんであって、報道機関にそんな意識は皆無のはずなのでありますけれども、朝日新聞に「国益を損なってけしからん」と毒づくなら、ワールドカップサッカーで一次予選敗退した日本チームも、全米オープンで準優勝した錦織圭選手にだって毒づけることになるのであります。そういうのは見苦しい。報道機関が国益のために報道するわけはないのでありまして、報道機関は政府関係者の行動が国益にかなうかどうかをチェックして国民に突きつける係りでありましょう。

  調子に乗って誤報をまことしやかに流したのは、単に情けない報道機関というだけ。

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