I've never felt like this before.初めての気持ち。(1)

ふと書棚を見ましたら、岩波文庫であまり開いたことのないものがたまたま目に入りまして、ちらりと見たら面白いのでご紹介いたします。『安永期 小咄本集 近世笑話集(中)』というようなもので、校注者は武藤禎夫さんと出ておりますけれども、江戸時代とはいえこれもやっぱり昔のものですから訳したのを先に紹介することにいたします。タイトルは「恋病」とありまして、「こいやみ」と読むようですが、今だと「恋煩い」でありましょうか。「恋患い」のほうが普通かもしれませんけれども、江戸時代の大店のお嬢さんの様子が出て参ります。ともかく、はじまり、はじまり。

   恋と言うものは女の子にとっては気持ちが塞ぐような原因でありまして、
  こちらのお嬢様も娘盛りにいかにもなふて寝の御様子、これはただ事では
  ないようだと察知する乳母が、ひそひそと事を荒立てないように尋ねること
  には、
   「あなた様の気塞ぎも、私のお見立てでは間違いないことでしょう。
    どなたさまがお相手じゃ、お相手の名をおっしゃいまし。お隣の
    繁様ですか」
   「いいえ、あの人じゃありません」
   「それなら、お向かいの文鳥様ですか」
   「いいえ、そんな人じゃありません」
   「それなら、お悩みの種はどなたですか」
  娘は、真剣そのものの表情になって答えたことは、
   「誰だっていいの、恋してみたいの」


よくできた話であります。野暮な解説は不要でありますけれども、「繁様」というのは「しげさま」でありますが、たぶ画像ん「繁蔵さん」というような名前の人でありまして、隣家の跡取りで4、5歳くらい年上の男性でございましょう。「文鳥様」というのは、これは俳号か何かでありまして、こちらもお向かいの跡取りか何かなんでしょうけれども、もしかしたら次、三男坊で風来坊、俳諧の集まりに顔を出して俳句をひねるような風流人でありますが、もしかしたら入り婿に丁度の人かもしれません。

家庭菜園は、もはや野となりました。

さて、原文はどうなのかと言うと、次のようなことであります。

   ○恋病
 
   恋は女子の癪の種、娘ざかりの物思ひ寝、ただではないと見てとる
  乳母、しめやかに問ふは、「お前の癪も、わたしが推量違いはあるまい。
  誰さんじゃ、言ひなされ。隣の繁様か」「イゝヤ」「そんなら、向ふの
  文鳥様か」「イゝヤ」「してまた、誰じゃへ」。娘、まじめになり、
  「誰でもよい」。

     そうかそうか、だれでもよいが、相手が見つからないのも鬱屈する原因であります。

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