和久井映見 シングル レビュー 一覧(3)

⑨ 94・11・2
 〇 赤と緑のリボン
      
作詞;康珍化 作曲;柴野繁幸 編曲;門倉聡
※テレビ東京系「TVチャンピオン」エンディング・テーマ

*この曲も、第8番目のアルバム「愛しさのある場所」に収めれています。ここからは、シングルで発売される曲のテイストが似たり寄ったりと言うか、ある意味安定してしまいますので、なんとなく試行錯誤の時期は終了だったのでありましょう。女優として主演に起用され、私生活では結婚を控えて幸せ一杯の時期でありますから、無理にあれこれ冒険する必要はなくなったのであります。ものすごく売れた歌がなかったのは、むしろ幸福でありまして、デビューしてすぐにヒット曲に恵まれた場合には名前は残るんですが、実はその後あまり売れないのであります。もちろん、歌声に特色があって楽曲を提供する人に恵まれれば、何回もヒットしますが、それは一握りの歌い手のことでありまして、それだって5年売れ続けたりはしないのであります。テレビの歌番組の常連でも、シングル10曲が人の記憶に残る人は皆無であります。そしてその10曲を、10年後20年後に安心して聞けるかと言うと、これはもう落ち着かないのであります。その点、20年以上が経過した今、この曲の鮮度は少しも落ちていないのであります。不思議そのもの。9点

 c/w いつまでも愛せそう
      
作詞;戸沢暢美 作曲;岡田陽助 編曲;門倉聡

*たぶん、カップリングということを考えて選曲したのだと思いますが、歌い手である和久井映見さんのイメージを壊さないような、そういう曲であります。これも、第8番目のアルバム「愛しさのある場所」に収めれています。ざっと見て、そのアルバムはなかなかの粒ぞろいでありまして、そこから4曲がシングルに取られているんでありまして、出来の良さはなかなかであります。アルバムの質が高いという点では、和久井映見さんは制作陣に恵まれたのでありましょう。80年代の女優でアイドル歌手だった薬師丸ひろ子さんや斉藤由貴さんも、アルバムの質の高さには定評がありまして、シングルよりもよさそうな歌がゴロゴロしているのであります。それでも、今から見れば玉石混交でありまして、それは致し方ないのであります。歌謡番組を見ていただけの人は、アルバムの存在を知りませんので、彼女たちを音痴だと断言したりするのであります。いやいや、違うでしょう。それと、カセットテープでラジオのベストテンを録音していた方は、私もそうですが一番しか知らないのであります。歌は二番まで、できたら最後まで聞かないと仕掛けがわからないのであります。地味な曲のようでいて、なかなか味わいがある歌がいくらでもあります。これもその一つ。アルバムにはほかにエッジの利いた歌がいくつもあるんですが、それらを差し置いて配置したようです。8点


⑩ 95・5・25
 〇 毎日会いたい
      
作詞;西脇唯 作曲;高野寛 編曲;木本靖夫
※「OMMG」CMソング(Wikipediaによる)

*和久井映見さんの9枚目のアルバムは、「SINGLES(シングルス)」でありますが、これが1995年の発売でありますが、それまでのシングルを発売順ではなく、5・6・10・4・3・2・8・7・9・1という具合に収録していて、魔訶不思議な編集になっております。この歌は3曲目だったのです。このシングル・ベスト盤が不評だったのか、12枚目のアルバムとして「ベストセレクション」と称する、発売順のまま10曲収録したものを再発しているのであります。よって、そこには当然この曲はしんがりとして10番目に出ているんであります。でもって、もっと不思議なのは、10番目のアルバムである「Dearest(ディアレスト)」にアルバム・ミックスバージョンとして、この「毎日会いたい」が8番目の曲として入り込んでおりまして、間奏で口笛が入っていたりするのであります。だから、都合3回アルバムに登場であります。ちょっとドタバタした感じでありますが、歌の方はどっしりと落ち着いた歌で、盤石の和久井ワールドを歌い上げております。デートをすっぽかされたオフィス・ガールの嘆きを、スローなテンポで切々と訴えるという歌でありまして、まあ、結婚を意識した女性の心情を丁寧になぞっているのであります。和久井映見さんの暖かくて芯のある声質が、バラードに合っているというか、切ない感じがものすごく感じられるのであります。作詞家・作曲家が、見つけちゃった鉱脈をせっせと掘り続けているという感じでありますけれども、世の中は頼もしい男は絶滅し、女の自立心は期待したほどには育っていないという状況なものですから、こうした結婚ソングが歓迎される余地が少なくなっていたのが残念であります。皆がこの歌のような価値観なら、少子化にはならなかったのでありましょう。7点

 c/w 忘れないで
      
作詞;岩切修子 作曲;柴野繁幸 編曲;木本靖夫

*これは、第10番目のアルバム「Dearest(ディアレスト)」のラストに入っている曲です。"dearest"というのは、たぶん形容詞のdearの最上級でありますが、どちらかと言えば「親愛なる人・愛しい人」でありますから、最愛の人を呼ぶ、ちょっとふるめかしい言葉で、「あなた」のことであります。そのアルバムの最後を飾る歌としてはふさわしい歌でありまして、ゆったりとしたリズムで展開されるバラードでありますが、歌詞の内容は2人が出会った夏の日を写真を見ながら回想して、余韻に浸っている女性の立場で、あの日を「忘れないで」と訴えるものであります。派手ではないので、これを例えば70年代歌謡曲や80年代歌謡曲に放り込んで勝負したら、とても勝ち目はないのでありますが、アルバムの掉尾を飾る歌として見たり、和久井映見さんの10番目のシングルのカップリングとして見たら、ほぼ完璧でありましょう。まるで、冷え込む冬の夜に暖かい暖房の効いた室内で肩を並べていて、彼女が歌ったらとても幸せを感じるはずであります。カップルになったきっかけが鮮明な記憶として残っていて、ファーストキスにドラマがあれば、この歌を支持しないわけには行かないというような歌であります。人は過去の記憶で生きられるのであります。詞と曲が無理なくまとめられていて、いい歌です。8点

⑪ 95・11・25
 〇 Living In The Town
      
作詞・作曲;五島良子 編曲;門倉聡
※熊本「鶴屋百貨店」CMソング(Wikipediaによる)

*これも、第10番目のアルバム「Dearest(ディアレスト)」に入っている曲でありますが、ご本人のご結婚前後にリリースされておりまして、結婚したら歌を止めちゃうかもしれないと危惧した周囲が駆け込みで収録を強制して、出来のいいのをシングルでも出し、アルバムもちゃっかり作っちゃったということかもしれません。ここまでくると、和久井映見さんも歌うのが楽しみで、新譜をもらっては歌い込んでいたことは間違いない。たぶん、妙にヒット曲がなかったのが幸いして、プレッシャーの少ない状態で歌を楽しんだという様子がうかがえるのであります。よって、この曲は軽快なテンポでメリハリのある歌い方でありまして、一言で言うと洒脱な感じに仕上がっております。新しいタイプの歌にどんどん挑戦する感じでありまして、バラードに鉱脈を見付けたのに、それとは違うデキシーランドジャズというか、マーチみたいなリズムに乗せて朗々と歌い上げています。伸びやかでいい感じであります。20年前の歌というのが嘘のような、とても新鮮な歌声。聞かなきゃ損、という一曲。9点

 c/w HOPE~新しい未来のために
      
作詞・作曲;篠原美也子 編曲;菅原弘明

*こちらも、第10番目のアルバム「Dearest(ディアレスト)」に入っている曲でありまして、一見地味な曲なんですが、なかなかどうして、よく考えられた詞と曲でありまして、一篇の短編小説のような趣であります。彼に呼び出されて会う前の支度をしているんでありますが、最後の仕上げのルージュを塗る、たぶん5秒とか10秒のためらいが歌に内在する時間であります。どの色で仕上げようかという話なんでありますが、その時に頭の中を彼とのこれまでの出会いと恋愛生活が走馬灯をしているわけで、これがけっして軽くないのであります。和久井映見さんの演技と同じで、もうその世界に引っ張り込まれて泣かされるわけで、そのための脚本を作詞・作曲の方が見事にこしらえたのであります。ああ、そうだよな、大人になっているしっかり者の女性なら、こういう瞬間があるだろう、というようなことであります。でもって、語り手と言うか主人公の女性はドレッサーの鏡で自分のお化粧が済んだ顔を見つめているのでありますが、実は歌を聞いていると、相手の男の夢と挫折が手に取るようにわかるわけで、その彼の気持ちを考えてルージュの色選びをしているのであります。女性を描いているのに、男の人生がぐわっと浮かぶわけで、これはもう文学なんでありまして、映像ではちょっとうまく表現できないかもと思います。祝福の歌なのに、ちょっと苦い、苦いけれどとても甘美なのであります。歌声は絶妙。9点

⑫ 97・1・25
 〇 だきしめてあげる。
      
作詞;只野菜摘・鈴木祥子 作曲;鈴木祥子 編曲;菅原弘明
※テレビ朝日「ウィークエンドライブ週間地球TV」エンディング・テーマ

*この歌は、第11番目のアルバム「心に花が咲くように」に収められている歌であります。落ち着いたイントロからはじまりまして、低く低くボーカルがゆったりとしたメロディーを口ずさみますが、途中から力強いフレーズが入りまして、サビの部分で「だきしめてあげる」と高らかに宣言する感じで歌い上げるのであります。和久井映見さんの低音の響きを最大限に生かし、さらにデビューから変わらない声量の豊かさが感じられます。なんだかロックバンドのボーカルが、巨大なドーム会場全体に歌声を披露している図が浮かびまして、歌の重量感はシングルの中では随一じゃないかと思うのであります。ご本人の好きな歌の方向だろうなと感じます。おそらく女優の和久井映見さんの背後に、このハードな感じの女性がいるんでありましょう。タイトルは、最後に「。」が入ります。9点

 c/w 手をつないで
      
作詞;井上睦都実 作曲;酒井ミキオ 編曲;木本靖夫

*この歌も、第11番目のアルバム「心に花が咲くように」に収められておりまして、カップリングとしては妥当なところであります。アコスティックギターのイントロからして軽快でありまして、フォークソング黎明期のテイストがする曲でありまして、柔らかいボーカルが特徴であります。こちらは、ライトな和久井映見さんでありまして、朝ドラで見せる女優のイメージのままであります。安心してどこででも口ずさめるような歌でありまして、そういう歌を丁寧に歌い込んでいるところが、歌い手としてのよさでありましょう。アルバムの中には、もうすこしメリハリの利いた歌もありまして、それらを制作サイドは出し惜しみするかのように温存しております。7点

* このシングルCDについて書かれたブログ記事を見付けました。参考までに。
https://blog.goo.ne.jp/nakamuranaika/e/651df8b05187038a3887785f5f129960

⑬ 97・5・25
 〇 雨にもっと打たれて
      
作詞;只野菜摘 作曲・編曲;菅原弘明

*これも、第11番目のアルバム「心に花の咲くように」に入っていて、やはり低音で静かな歌い出しであります。サビの部分で「雨にもっと打たれて」と繰り返すんですが、そのあとの抑えの部分のメロディーが心に滲みる感じであります。これも、ちょっとフォークソングの味わいがしまして、おそらく世間の流れに敢えて棹差してみたような感じでありましょう。同じアルバムの中なら、「春の訪れ」や「背中~愛する人へ」なんかの方がシングルには向いていたんじゃないかと思うのでありますが、それを言い出すと、アルバム全体のなかからシングル候補がいくらでも見つかってしまうのであります。アルバムが充実しているために、シングルを世の中に提示するという音楽活動のあり方が、なんだかもう無理だったのかと思ったりします。ともかく、8年くらいの間に13枚のシングルを世に問うたわけで、その水準の高さはなかなかなものであります。大ヒットのあった歌い手さんと比べて、遜色がないどころか、ひょっとすると上回るところがあるように思います。8点


 c/w 話をしよう
      
作詞・作曲;井上睦都実 編曲;重実徹

*この曲も、第11番目のアルバム「心に花の咲くように」に入っていまして、そのなかでは軽くて落ち着いた曲であります。ミュージカルを見ているような感じがするわけで、ちょっと単調なところがあるんですが、カップリング曲としては安心して聞ける曲です。6点



*おしまいに

考えてみると、1997年の頃には、Windows95が入って来て、パソコンで音楽を聴くようになっていたんですが、それにふさわしいアルバムなどがなかなか見つからなくて、ちょっぴり困っていたのであります。まだ、中古アルバム市場が定着していなくて、まだまだレンタルで借りるのも珍しかったかもしれません。たまに、大ヒットしているCDを買ってきて繰り返し聞くというような、そんな試聴方法だったのでありますが、一枚の値段が高かったなあと言う印象です。今は、ストリーミングで意外な曲を掘り起こせるという時代が来たということでしょうか。その結果、配信元がミックスした企画のなかから、和久井映見さんを見いだしました。

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