今こそ聞きたい和久井映見 アルバム名曲選(3)

⑧ むかえにこないで
   
作詞;戸沢暢美 作曲;楠瀬誠士郎 編曲;門倉聡
※第6番目のアルバム「PEARLY(パーリー)」の2曲目。第7番目のアルバム「あなたがわたしにくれたもの」の7曲目にも。
♪むかえにこないで むかえにこないでいて 大切なことを決めてるところ

なんとなくでありますが、和久井映見さんサイドの狙うターゲットが、この6枚目と7枚目のあたりで、男子から女子に変更になったようであります。女性が共感できるような役を演じることが多くなって、男子の好むようなアイコンを目指すよりも、女子に受けるのではないかと、女優業の方からあれこれ検討して、歌手活動の在り方を見直したのでありましょう。もし、女性で和久井映見さんのファンであれば、この「むかえにこないで」を含めて、未婚女性の結婚カウントダウンを歌った歌の数々は、非常にうれしい歌のはずで、休日の朝なんかに流しながら部屋の掃除なんかをしたら、おそらく気分爽快になるのじゃないかと思うわけです。この歌の場合は、結婚を申し込まれた女性が一度部屋を飛び出してしまったという場面で、踵を返して「イエス」と言いに戻ろうとするところを歌にしたものであります。80年代の松田聖子さんや小泉今日子さんが歌いそうな内容ですが、やはりあの頃は20歳前後の「初恋」が基本ですから、もう結婚を前提とした歌となると時代が少し違っているのであります。しかし、この歌の歌声を歌い手の名を伏せて聞かせたら、「だれ?だれ?」となって盛り上がるかもしれません。絶対に当たらないかもしれず、当たるまでに80年代のアイドルの名前が出尽くすはずであります。伸びやかな歌唱でありまして、うまいと思います。8点

⑨ 誰かをあなたは愛してた
   
作詞;松井五郎 作曲;後藤次利 編曲;門倉聡
※第8番目のアルバム「愛しさのある場所」の5曲目
♪怖いのは優しいしぐさ つらいのはそばで眠る夜

テレビの普及と言うのは、1959年の皇太子ご成婚だとか、1964年の東京オリンピックなどが後押しをして、ぐんと伸びたのだと言われております。その結果、テレビ番組で歌謡曲が流れて爆発的に売れるということになったのでありましょう。それまでもラジオで充分歌謡曲は生まれたんですが、それに加えてきれいな歌い手がもてはやされるという状況が生まれたのだろうと推測できます。1970年前後の歌謡曲は案外過激でありまして、そんなこと歌っていいの?というような歌詞もたくさんありました。テレビ番組だって裸が出てくる番組はいくらでも流れていたのであります。伊東ゆかりさんの「小指の想い出」(1967年)とか、森山加代子さんの「白い蝶のサンバ」(1970年)なんか、大人になってから歌詞の内容に気が付いて赤面するようなものであります。それらを歌っていて親からぶたれた人がいたのも知っております。この二曲は長山洋子さんがアルバム「捨てられて~可愛い色気はお好き?」(1995年)でカバーしておりますが、相当妖艶であります。それらにくらべると、この歌は相当上品でありますが、それでも全く負けていないのであります。愛されている女性が、男性の過去の女性の影におびえるという内容ですが、そこに人を本当に好きになった時の心理が込められていて、思わずうならされるのであります。これを愛らしくさらりと歌いますから、なかなかの表現力なのであります。10点

⑩ 予言
   
作詞;康珍化 作曲・編曲;岩代太郎
※第8番目のアルバム「愛しさのある場所」の6曲目
♪あなたには たぶんねぇ わからないでしょう 別れ道の恋が

『文明の衝突』は、アメリカ合衆国の政治学者サミュエル・P・ハンティントンが1996年に著した国際政治学の著作であります。東西冷戦の終了後の世界を予言し、異文化・異文明の衝突する地点で、紛争が激化しやすいと指摘したもので、まさにその通りその後を言い当てました。問題は、世界を九つの文明に分けた時、日本が最も最小の孤立した文明と指摘されたことで、つまり絶滅危惧種であると理解できます。だから外国の歌は日本に浸透しますが、日本の歌謡曲は海外には影響を及ぼせないのでありましょう。90年代にJ-POPと称してインターナショナルを気取ったのに、ニューヨークのCDショップには日本の商品がなかったということが2000年代にすっぱ抜かれて、どうもJ-POPはうさんくさいと指摘した方がいて、それは大方当たりであります。J-POPの問題は、音楽を偏向して世間に流布した勢力がいまして、その結果、一般の人に多様な音楽が届かなかったことであります。従来のベストテン中心の歌謡番組が消滅したのと関係がありそうですが、要するに質のいい物でも排除された可能性は高いのであります。この曲を聞くと、そんなことをつい思ってしまうのでありますが、私は謀略史観は嫌いなので、妄想は妄想で慎みたいと思います。で、この歌のことですが、ステディな関係の相手がいるのに、別れたくなってしまうのでありますから、おそらく二人の性格が合わないのでありましょう。このまま結婚すると、やがて離婚する羽目になるわけで、こうなると女性は憂鬱でありますね。女性の心の深淵を覗くことができます。不安心理を掻き立てる編曲がすばらしい。胸に刺さります。9点

⑪ Sweet Sweet Holiday(スィートスィートホリディ)
   
作詞;和久井映見 作曲;高野寛 編曲;木本靖夫
※第10番目のアルバム「Dearest(ディアレスト)」の7曲目。
♪昨日までは忙しくて 会えたとたん安心して ソファーにもたれたら眠くなったり うまくいかないけれど

安心して聞ける、ボサノバの曲であります。アルバム自体が働く女性に対するさりげない応援歌というような内容ですから、その中にしっぽりとはまって、何の違和感もない歌なのであります。なるほど、こういう詩の内容で、それにこんなメロディーをつけて、そして巧みに編曲を加えたら、こうなるのかという曲でありまして、そこに柔らかい方の和久井映見さんの歌声が加わると、なんだか脳みその疲れが一気に吹き飛ぶような感じなのであります。休日の感じはこうありたいというような雰囲気でありまして、人生の中の陽だまりの中にいた日々を、うっとりと思い出してしまいそうでありまして、生きている幸せがじんわりと湧いてくるのであります。アルバムの中に本人が作詞なさった曲が早くから入っていまして、結構な数になりますので、それだけを集めてプレイリストを作ってみたら、それで十分楽しめてしまったのには驚きました。作曲はしないようですが、作詞はいい塩梅のものばかりでありまして、だとすれば相当数の作品があるはずで、その氷山の一角を味わっているんですが、なんだかもうちょっと見てみたいという気がします。9点

⑫ STAND BY ME(スタンドバイミー)
   
作詞;和久井映見 作曲;酒井ミキオ 編曲;菅原弘明
※第11番目のアルバム「心に花が咲くように」の5曲目
♪どんなに遠く離れても 一番近くにいる人

同じ題名の映画は、少年四人の冒険を描いたものでありまして、1986年公開のアメリカ映画であります。歌の方は、結婚を決意した女性の気持ちを語るものですが、メロディーラインがとても自然でメリハリがあり、ちょっとわくわくするのであります。ドラムの刻むリズムが、しっかりとステップを踏んで歩くようなペースですから、気持ちいいのかもしれません。ふと思うのは、卒業式の歌として聞いてみても良いわけでありまして、相手の存在を胸に熱く思いながら人生を歩むということの大切さを歌っているわけであります。この歌も和久井映見さん自身の作詞でありますが、「心に花が咲くように」というアルバムのコンセプトが和久井さんによるものなので、おそらく歌手活動の締めくくりとして、製作スタッフに対する置き土産のような歌詞なのであります。取り立ててヒットした曲がなかったのは残念ですが、そのことによって歌の内容を世間におもねる必要がなかったために、最後は穏やかで心温まる内容のアルバムを思う存分作れたようであります。人生はあざなえる縄の如し、って言いますけれども、これっていいかえると人間万事塞翁が馬でありますから、何が不幸につながり、何が幸福につながるか分からないのであります。安心して聞くことのできる前向きな曲が最後のアルバムに収まりまして、他人事ながらほっとするわけです。8点

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