今こそ聴くべき斉藤由貴 アルバム名曲選(2)

⑥ 12月のカレンダー
   作詞;森雪之丞 作曲;岡本朗 編曲;武部聡志
※第4番目のアルバム「風夢」(1987年4月21日)の5曲目

   ♪今も壁からはずせない カレンダー

アルバムの13曲中に斉藤由貴さんの作詞が5曲もありまして、だとすればアルバム制作の企画段階からしっかりと食い込んでいるわけで、歌わされているというような状況ではなくて、こう歌いたいああ歌いたいという意志がしっかりあったことがわかるのであります。そうした曲は当然楽しいのでありますが、提供された曲でもちゃんと曲想に合わせて工夫して歌っているわけで、この人の歌唱は自由自在であります。ちなみに、YouTubeにはデビュー前にサンプルとして歌わされたという曲のカセット音源が流れている映像がありましたが、松田聖子さんの歌なんかを上手に自分のものにして歌っておりまして、さすがなのであります。この曲は、アコスティック・ギターの音色と、コーラスと本人歌唱のコンビネーションを聞くだけでも価値があります。失恋の歌でありますが、思い出はいつしか美しくなるのであります。8点

⑦ 街角のスナップ
   作詞;和泉ゆかり 作曲;亀井登志夫 編曲;武部聡志
※第4番目のアルバム「風夢」(1987年4月21日)の11曲目。ビデオアルバム(映像作品)「PANT」(1988年3月21日)の5曲目。
   
   ♪カード電話の長い人波 夕暮れターミナル

昔、星新一さんの短編小説を「ショート・ショート」と呼んでいましたが、まさしく歌謡曲のショート・ショートでありまして、最後に落ちが来るのであります。短い会話を重ねていくという趣向でありますが、なかなかどうして面白いのであります。世の中からカード電話が消滅しかけていますから、さて今の人に通用するのかどうか、と言うような問題がありますが、これがわかってしまうという世代がこれを楽しめば十分でありましょう。携帯電話が普及する前の歌としては、非常に貴重だし、それで歌の価値が減じることはないと思います。弦楽器の響きも含めて、編曲がとても巧みであります。なお、映像付きの「PANT」は、2009年10月21日にDVDで再発売されておりますが、収録の順番が違っているようで、そこでは4曲目であります。「街角のスナップ」は原賢司さんの制作でありまして、YouTubeにアップされているんですが、見てみると俳優の吹越満さんが出演しております。吹越さんのWikipediaでは、この映像作品への出演は漏れております。9点

⑧ さよなら.さよなら!
   作詞;斉藤由貴 作曲;崎谷健次郎 編曲;武部聡志
※第5枚目のアルバム「ripple(リプル)」(1987年9月21日)の1曲目。

   ♪抱きしめた後のテレた 君を忘れないで

アルバム収録曲が6曲でありますが、全部アカペラでありまして、バックコーラスが楽器の音まで出しておりまして、そう指摘されないとアカペラとは気付かないかもしれないのであります。シングルの6曲目に「土曜日のタマネギ」(作詞;谷山浩子 作曲;亀井登志夫 編曲;武部聡志)という曲が出ておりましたが、たぶんそれに触発されて、アカペラに特化してすべての作詞を斉藤由貴さんが手がけております。ある意味、アイドル歌謡曲の金字塔だと思うアルバムなのであります。そして、その中でも面白い趣向の歌でありまして、男の手切れの歌詞になっています。普通に内容を考えたら「赤毛のアン」が下敷きでありますが、世界名作劇場シリーズのアニメの「赤毛のアン」は1979年ですから、斉藤さんはまさに見て育ったはずのアニメでありまして、それを換骨奪胎して見事に別れの風景を描いて見せたというわけであります。男性の視点で語る別れのセリフなんだけれども、相手の女の子にはこの別れ話は通じないのではないかと思わせます。後世に残すべき傑作じゃないかと思うのは私だけなのか、いや、Amazonのレビューなんかも同じような意見であります。10点

⑨ あまのじゃく
   作詞;斉藤由貴 作曲;玉置浩二 編曲;武部聡志
※第5枚目のアルバム「ripple(リプル)」(1987年9月21日)の6曲目。1988年4月29日発売のシングル「うしろの正面だあれ」のカップリング。

   ♪ケンカしたのは誰? 問いかける波

"ripple"というのは、さざ波とか波紋という意味らしいのでありまして、それって英語の得意な人は知っているのかもしれませんけれども、"wave"よりは難易度が高いようでありまして、"wave"が英検の3級程度だとすると、"ripple"は英検の準一級程度なんだそうであります。TOEICだとスコア730点以上のレベルらしいと英語のサイトにありますから、こりゃあ、そうとう英語に堪能な女子じゃないと出てこないもののような気がいたします。タイトルはこの「あまのじゃく」から来たようでありまして、バックコーラスの波の表現が圧倒的なのであります。ただ、それにもましてボーカルのアカペラが冴えわたりまして、歌謡曲と言うよりも宗教音楽のような、なんだかありがたい一曲ではないかと思うわけであります。たぶん、若い相思相愛の男女が海辺にデートに行って、キスをしたいとか、強引に奪われたとか、そういうことでケンカになった時の心理状態を描いたのでしょう。初めてのキスの後の状況を捉えたとしてみると、ものすごく的を射ているように思います。想像するに、大方の人のファーストキスの後の気分と言うのはこういうのでありましょう。好きなんだけど嫌い、嫌いなんだけど好きと言うようなものでありまして、こうして書くと頓珍漢なオタクの理屈みたいで気持ち悪いんですが、曲の方は非常に気高い感じがいたします。文句なく10点

⑩ かわいい あたし
   作詞;斉藤由貴 作曲;MAYUMI 編曲;武部聡志
※第6枚目のアルバム「PANT(パント)」(1988年3月21日)の4曲目。

   ♪まだまだ子供ね もしや…? ずっと…?

マーチングバンドの太鼓で始まるイントロが印象的でありまして、つまりマーチ風のリズムで作られた曲であります。曲の途中で、電話の応答が入りまして、斉藤さんとマネージャーのやり取りという体裁のセリフが入りまして、完全なアイドルの楽屋話なのであります。忙しすぎて自由がないので、気ままな一日を過ごしてみたいという願望を歌にしたものであります。お笑い芸人の瞬間芸みたいなアルバム用の曲でありますけれども、ある種の瞬間芸が時代の風俗として記憶に残るように、80年代のアイドル文化の貴重な証言として価値がある歌であります。彼女のファンの集団がいたら密かにベスト10などに加えていそうな楽しい曲でありまして、こういうことを作詞して曲を載せ、それをアルバムの中に潜ませるというのは、できそうでできないことでありまして、女優としての斉藤さんのファンの人はぜひ聞いてみるといいと思うのであります。7点

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