今こそ聴きたい薬師丸ひろ子 アルバム名歌選(2)

⑤ 『Sincerely Yurs』(シンシアリー・ユアーズ)1988/4/6

 (2) 「DISTANCE
     
作詞・作曲;薬師丸ひろ子 編曲;新川博
♪遠くから見守っていたい あなたの喜び 哀しみ

※実体験なのかと、ちょっと余計な想像をふくらませてしまう一曲であります。もちろん、作詞というものはそんなものではなくて、体験だけを歌詞にしたらたぶんうまくは作れないのであります。若い日の浜辺のデートですが、照れてしまって手を繋げなかった彼を、ふと女の子が思い出しているという、友人以上恋人未満の関係を懐かしんでいる歌です。「distance」は、「距離」と言う意味でありまして、二人の距離がもうちょっと近くなって指が触れていたら、恋人だったかと残念がっているわけで、場面の切り取り方が上手いのです。シングル発売された「終楽章」(1988/3/30)のカップリング曲でもあります。8点

 (4) 「もう一度

作詞・作曲;竹内まりや 編曲;萩田光男
♪傷つけ合うより 素直な心と 微笑み 選んだの

※同じアルバムからシングル発売された「終楽章」よりも、こっちのほうがシングルカットに向いていたんじゃないかと思ったりするのであります。「終楽章」も竹内まりやさんの曲でありますが、人道的にはこっちの方がいいぞと思います。イントロのストリングスも美しいし、さらに歌い出しの声の透明感が素晴らしく、「選んだの」の部分の切れ味がすごいと思います。竹内まりやさんは、この「もう一度」を1984年4月10日にシングルでリリースしています(編曲は山下達郎さん)から、4年余りでカバーするのはまずかったのかもしれません。聴き比べてみるのもおすすめであります。8点

⑥ 『SENTENCE~セ・ン・テ・ン・ス~』(1988/8/5)

(3) 「瞳で話して
     
作詞;松本隆 作曲;辻畑鉄也 編曲;船山基紀
♪言葉にできない光と影

※この「センテンス」というアルバムは、微妙なベストアルバムであります。シングルとアルバムから、この時点で歌い手にあった歌を選び抜いたアルバムでありまして、2011年に出た『歌物語』の原形みたいなアルバムです。「瞳で話して」は、シングル発売された「ささやきのステップ」(1986/10/19)のカップリングだったんですが、今から見るとこちらの方がはるかにいいと思います。海外で3年くらい暮らした相手と未練たっぷりに別れるという状況を歌にしたもので、抑えた声で低く歌っているんですがドラマチックで、これまた抑え気味の編曲がいい塩梅なのであります。9点

 (8) 「胸の振り子
     
作詞;伊達歩 作曲;玉置浩二 編曲;萩田光男
♪千の剣だって わたしは受けるから

※たぶん、「セーラー服と機関銃」や「Woman~Wの悲劇」「あなたを・もっと・知りたくて」なんかに比べると世間に知られていない歌でありますが、名曲だと思います。作詞者は、小説家の伊集院静さんでありまして、そうするとこの歌は天に召された夏目雅子さんの立場を歌っているということになるような気がします。そういう女性が守護神となって、自分を愛してくれた男を守ると誓っている歌でありましょう。鈴が鳴るような声がすばらしい。文句なく10点

⑦ 『LOVER'S CONCERTO』(ラバース・コンチェルト)1989/2/15

 (6) 「水色の瞳
     
作詞;康珍化 作曲;筒美京平 編曲;武部聡志
♪素肌の海の底へ あなたをさらって行けるのならいいのに

※ディズニー映画の「リトル・マーメイド」は1989年11月に公開されたもので、日本での上映は1991年7月でありますから、この曲の方が先行しているのでありますが、映画の原作であるアンデルセンの「人魚姫」は、いわさきちひろさんの画で1967年に偕成社から出版され、実は1980年代に数社から盛んに出版されたのであります。薬師丸ひろ子さんを人魚姫にして、その心情を歌わせてみたというおとぎ話のような一曲。ヒットした「語りつぐ愛に」が好きな人なら、気に入ると思います。管楽器の音が不揃いなのが気になる。でも編曲はすばらしい。10点

 (9) 「うたかた
     
作詞;吉田美奈子 作曲;上田知華 編曲;乾裕樹
♪あなたが探した楽園の日々は まだ心と共にある

※「うたかた」というのは「泡沫」と書いたりするんですが、「よどみに浮かぶうたかたは」という方丈記の一節で分かるように、水面に浮かぶ泡のことであります。消えやすい儚いものでありまして、ここでは男女の愛を例えた物のようであります。詞がまったくの比喩でありますからメロディと編曲を頼りに言わんとするところを汲み取るような歌でありまして、一瞬つかみかけた幸福がもろく崩れたことなのかと思うんですが、解釈は様々ありそうです。8点

⑧ 『Heart's Delivery』(ハート・デリバリー)1990/3/28

 (3) 「Antique Clock」(アンティーク・クロック)
     
作詞・作曲;平松愛理 編曲;船山基紀
♪時間を飛び越そうとしたけど ふりこは戻ってくるのよ

※シンガーソングライターの平松愛理さんの提供曲でありますが、声質から言ってもなるほど似ていると思えますから、平松愛理さんが歌ったのも聞いて見たくなります。昔付き合った男性を偲ぶという歌でありますが、なんとも切ない内容を、これまた鈴が鳴るような声で歌い込みますので、上質の恋愛小説を読んだような印象です。思うんですが、交差点ですれ違ったのはやっぱり彼でありまして、彼女が頬杖をついているテーブルの傍らに微笑んで立っているんじゃないかというような想像をいたします。9点

 (5) 「瞳を知りたい

作詞・作曲;大江千里 編曲;清水信之
♪瞳をほどいて理由をきかせて 夢のつづきを教えて

※アルバムの名前は、そのまま読めば「ハーツ・デリバリー」かもしれないのでありますが、日本語としては微妙に通じないわけで、「ハート・デリバリー」のほうがわかりやすいのであります。このアルバム名が、薬師丸ひろ子さんのラジオ番組のタイトルにも使われておりますから、おそらくこの言葉を大切に思っているのであります。アルバムも粒よりの名曲でありまして、名盤と呼んで差し支えないと思います。それが30年近い昔のものである、ということに驚いてしまいます。旅立つ女の子を、呆然と見送る男の子の歌であります。この曲は、もはや封切り映画の世界そのもの、アイドル歌謡の到達点。9点

⑨ 『PRIMAVERA』(プリマベーラ)1991/3/13

 (4) 「冬の青空
     
作詞;尾上文 作曲;上田知華 編曲;大村雅朗
♪二人がめぐりあったことの不思議さにいつまでもたたずんでいた

※手堅いリズムが作り出す安定感のある歌でありまして、よく考えたらマーチなのであります。結婚秒読みの女性の幸福感を歌っていて、夏に出会った二人が、冬には似合いのカップルになっているという歌であります。まだ、少子化なんてことが政治的な課題にまでは至っていない頃の歌でありまして、薬師丸ひろ子さんが暖かいラブソングを世に送り出していたのが、はるか遠い昔となりました。当時のファンはもうこのアルバムなんか、彼女の結婚の報を聞いてしまってからは振り向きもしなかったかもしれないのですが、この歌は地味ながらいい歌です。8点

 (5) 「もう泣かないで
     
作詞;薬師丸ひろ子 作曲;上田知華 編曲;大村雅朗
♪もう 泣かないで そんな寂しい顔 似合わないから

※中村哲さんのサックスが心に滲みる一曲でありまして、その後の歌い出しが非常に印象的な一曲であります。歌い手の声が、管楽器のように旋律を奏でるという感じでありましょう。このアルバムの中では、唯一の歌い手自身による作詞ですが、慈愛に満ちた眼差しで挫折しそうな男性を支えるという内容でありまして、人生の応援歌なのであります。刺激の強さで勝負するシングル曲としては難しいのでありますが、奇をてらわないまっすぐな歌詞でありまして、歌唱とあいまって心地よい歌であります。9点

最後に、評価の基準を自分なりの言葉で示しますと、だいたい次のようなことです。

 10点 ぐっとくる作品。人生の肥やしになります。
  9点 名作。聞いてみて損はしない。
  8点 良作。ファンじゃなくても納得できる。
  7点 佳作。安心して聞いていられます。
  6点 平均点。もう一工夫ほしい感じ。
  5点 凡作。お勧めできません。
  4点 失敗作。欠点を並べてしまいそう。
  3点 愚作。こういうのもあるよと笑えます。
  2点 駄作。話題にすると人格を疑われそう。
  1点 事故。聞かなければよかった。

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