まだまだ聞きたい 和久井映見名曲選(7)

① Shining Day(シャイニング デイ)
   作詞;杉山真理子 作曲;中崎英也 編曲;菅原弘明
   ※第6番目のアルバム『PEARLY(パーリー)』の6曲目
   ♪ともだち以上で 恋人以下の しあわせは

オフィイス街のカフェテラスのお昼休みの情景でありまして、たぶんOLをしている女性の気分を歌った歌であります。同じ会社か近所の会社の男性が週末の予定をさりげなくいれに来て、舞い上がってしまっている彼女の様子に満足しつつ、昼休みはもう終わりで仕事に戻らないと駄目だよってせかしているという状況なのであります。ランチを乗せたトレイを戻しながら、スキップして仕事場に戻る気分を歌っているわけで、もうちょっと彼と見つめ合いたかった、などと恋愛気分が盛り上がっているのであります。もしかしたら、女性の人生で一番幸福な瞬間かもしれないという事なのです。まあ、恋愛関係になると維持するのが大変だし、次はプロポーズだ何だと面倒なわけで、それに比べたらデートの誘いは、軽ければ軽いほどうれしいのであります。和久井映見さんは、舞い上がった女の子の気分を上手に発声していまして、胸いっぱい、ごちそうさま、という歌なのであります。この歌に合いそうな歌い手を考えると、河合奈保子さんをなんとなく思い出す歌であります。7点

② フォト・スタンド
   作詞;康珍化 作曲;大門一也 編曲;菅原弘明
   ※第6番目のアルバム『PEARLY(パーリー)』の7曲目
   ♪ねぇ わたし あなたを想って 瞳とじるのが好き

フォト・スタンドに飾っていた自分の子供時代の写真を見せてあげるという、ただそれだけの歌でありまして、だとすると彼を初めて自分の部屋に招いたという状況なのであります。たとえば、東京生まれの女性がずっと住んでいる自宅なら、フォト・スタンドの写真どころか、アルバムが腐るほど家のどこかにあるはずで、だとすれば、歌の主体の女性は地方出身で賃貸の部屋に住んでいるわけで、そこへ彼を招くというのはもう本気ということなのであります。照れながらお気に入りの子供時代の写真を見せているわけで、明るい性格であることは間違いなし、なのであります。アルバムでひとつ前に位置する「Shining day」の、その先の光景でありまして、このアルバムは、女優としてテレビドラマに引っ張りだこだったころの和久井映見さんのキャラクターを生かして、1990年代の女の子の幸福を追求してみたものと言えるかと思うのであります。小泉今日子さんのファンなら絶対気にいるだろうな、という歌唱ぶりであります。メリハリのある歌いっぷりが若々しくて、これをデビューの頃に出したらよかったのにと余計な憎まれ口がききたくなります。9点

③ いつか忘れましょう
   作詞;西脇唯 作曲・編曲;宮内和之
   ※第10番目のアルバム『Dearest(ディアレスト)』の2曲目
   ♪土曜日と日曜が ぽっかり空いてゆく

別れた直後の空虚感を歌った歌でありまして、何が原因で別れたとも分からないのであります。そういう点では、このアルバムのすべての曲に通底する気分を代表しておりまして、2曲目とは言いながら1曲目が『離れても』という曲のオルゴール風のメロディだけでありますので、この曲が実質的な最初の曲であることからみて、相当肝煎りの曲であります。『離れても』というのは、第5番目のアルバム『だれかがあなたにキスしてる』の10曲目にあるんですが、作詞が和久井映見さん本人であります。そこで謎が解けるような気がするわけで、『離れても』という曲にインスパイアされてできたのが、この『Dearest(ディアレスト)』というアルバムなんじゃないかと思います。だから、アルバム全体がセンチメンタルで、シックでよくできております。アルバムの写真は、含み笑いをしている口元を隠している写真でありまして、モノトーンで統一されているのであります。7点

④ コスモスの咲く道
   作詞;高野寛 作曲・編曲;木本靖夫
   ※第10番目のアルバム『Dearest(ディアレスト)』の3曲目
   ♪違う道 選んだ私たち 輝いた思い出 ありがとう

スマートフォンのAIアシスタントにシリ(Siri)がいて、和久井映見さんの曲を頼むと特定の曲が必ず入って来るということは前にも書いたんですけれども、どうやらこの10番目のアルバムのファンがどこかにいるようであります。この「コスモスの咲く道」もよく出てくるのであります。歌の内容と歌い方、コスモスという花のイメージと、和久井映見さんの近ごろの女優としての存在感、そういったものが絶妙にマッチしていて、何だか聞けば聞くほどいい歌になるような気がいたします。お腹から声を出しているんでしょうか、本当に安定していて、安心して聞いていられるのであります。それと、エレキギターが絡むのでありますが、これがなかなかいい感じでありまして、鈴木茂さんの演奏ではないかと思うんですが、Wikipediaには詳細なディスコグラフィがありありますが、和久井映見さんの名前は発見できませんでした。9点 

⑤ 遠い空に
   作詞・作曲;五島良子 編曲;門倉聡
   ※第10番目のアルバム『Dearest(ディアレスト)』の9曲目 
   ♪住み慣れたこの街が 私を勇気づける

たぶん、地方の街に会社の人事異動でやって来た男と恋仲になったのでありますが、ある期間が過ぎてまたまたどこかへ行くというので、関係を解消してさよならというような背景の歌であります。飛行機に乗って男は去って行くので、それを見送っている歌であります。トランペットでイントロが始まりまして、曲調はあかるく晴れやかなのであります。ブラスバンドの奏でる演奏をバックに、ちょっと未練を感じながら、さばさばしているという歌でありまして、よそ者に恋をしたという経験のある人なら、この歌の気分がわかるはずであります。作った方は「ごしまよしこ」さんでありまして、このアルバム制作の頃にポリスターに移って来た方で、同じアルバムの「リヴィング・イン・ザ・タウン」を提供しています。ふたつの曲には、1980年から2000年くらいの大都市間を人々が往来していた状況を捉えた点で共通点があります。高度経済成長期のように、ど田舎から都会に出るというのではなく、経済的に発展した結果、都会育ちの人たちが、別の地域の都市に仕事などで盛んに移動するという社会になったのであります。今はまた、育った土地にべったりで群れるというマイルドヤンキーの世界になってしまい、適齢期の若者はよそ者には見向きもしないのかもしれないと思ったりします。7点

⑥ サンクチュアリ
   作詞;岩切修子 作曲;石田ショーキチ 編曲;菅原弘明
   ※第11番目のアルバム『心に花が咲くように』の9曲目
     ナレーションが入るので、実際の曲としては7曲目
   ♪青い 青い空に 吸い込まれてゆく

この曲もイントロにトランペットと思われる管楽器が使われておりまして、ゆるい感じであります。シンセサイザーのピコピコというか、騒々しい感じから一歩引いた感じの音作りが感じられまして、特にこの曲の内容には合っているのであります。どうやら、一人旅をしているという設定ですが、切羽詰まったものが特にない状態を歌っているのであります。「サンクチュアリ」は、英語なら"sanctuary"でありまして、普通の感覚だと「聖域」でありますけれども、辞書を見ると「駆け込み寺」というのもあって、どうやら宗教的な方向に行くのでありましょう。ただ、1990年代ならテレビゲームが大人気でありまして、そう言うところでよく出て来る単語だったような気がします。この歌の場合は、日常の雑事から解放された気ままな一人旅の気分を表現したのでありましょう。メロディーが自然で、和久井映見さんも爽やかに歌っているのであります。8点

⑦ 背中~愛する人へ~
   作詞;岩切修子 作曲;石田ショーキチ 編曲;菅原弘明
   ※第11番目のアルバム『心に花が咲くように』の12曲目
     ナレーションが入るので、実際の曲としては9曲目
   ♪ぬくもりは 愛を信じる こころが聴いた 言葉ね

和久井映見さんは、ベスト盤を含めて12枚のアルバムが出ておりまして、その中で企画もののアルバムはこの11枚目のアルバムが最後であります。よってこのアルバムの中には、最後のシングル曲「雨にもっと打たれて」とそのカップリング曲「話をしよう」も入っているのであります。途中に三か所、和久井映見さんが語り掛けるナレーションもありまして、歌い手としての集大成であったのは間違いないのであります。その最後のエンディング曲がこの「背中~愛する人へ~」でありまして、なんともうっとりするような歌詞であり、メロディーであり、歌いっぷりであります。デビューしてからあまり歌手活動をしなかったために、これといった大ヒットもなくて、知る人ぞ知るというか、知らない人は私も含めて全く知らないというような歌い手さんでありますが、しかし、この到達点はなかなか高いのであります。ご本人はロックが好きらしいのでありますが、しかし、女優としてのイメージは、しっとりと優美な感じでありまして、そのイメージ通りのなんとも耽美な深い味わいの歌であります。ほんとにいい歌です。9点

   面白いのは、AmazonprimeやSpotifyで和久井映見さんの歌をすべて堪能できること。
   できることなら、この方の好きな邦楽・洋楽がどんなものか知りたいものであります。

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