A happy married life. 今宵の月を見ぬ里もありけり。

本日は旧暦で言うと10月12日でありまして、こんな時に月を見るというのは寒い思いをするだけでありますから、世間は冬の月を賞美の対象とはいたしません。ところが『源氏物語』の主人公光源氏は冬の月が好きだという設定になっておりまして、それが物語の中で説得力があるのかと言うと、さっぱり無いような事であります。10月の月を見るという画像のは、『十六夜日記』がそうでありまして、彼女は10月の16日の月を見ているうちに、裁判を打ちたくなって京都から鎌倉に出発したらしいのであります。京都のお公家さんの相続争いを鎌倉幕府に持ち込んで裁決してもらおうと思ったのでありますから、たいした度胸と言いますか、せっぱ詰まった状況があったんだと分かります。

芸術の秋。落ち葉もアートです。

日射しがありましても、もうちっとも暖かくないわけでありまして、冬は駆け足でやって来たようであります。この地の今朝の最低気温が0・8度でしたが、日中の最高気温が11・8度とありまして、13時から16時まで11度台をキープしておりました。この気温は12月の15日くらいの最高気温の平均ですから、本日は晩秋を通り越して冬本番の温度だったということになります。空から雪が舞ってきて、トナカイさんが鈴の音を馴らしながら舞い降りてきそうな天気だったという雰囲気なのであります。ソメイヨシノの紅葉が一気に進みまして、はらはらと落ちておりまして、たぶん写真の落ち葉もソメイヨシノなんでありましょう。撮影している時は樹木の種類を考えませんでしたが、樹皮の感じはソメイヨシノのようであります。でもこれは、春にならないと木の種類が分からない気がいたします。

   正しくは東京藝術大学美術館入り口の落ち葉。

見て参りましたのは『The Art of Gaman 尊厳の芸術展』と言うものでありまして、これから一年くらいの間に、福島・仙台・沖縄・広島で開催するそうでありますが、その皮切りとして東京は上野にあります東京藝術大学美術館で開催されていたものであります。11月3日から始まっておりまして、千秋楽は12月9日ですから、今日はちょうど真ん中あたりと言うことでしょうか。太平洋戦争中に日系アメリカ人がアメリカで強制収容所に送られまして、非常に過酷な生活を強いられたんだそうでありますけれども、そうした生活の中で作られた日用品や装飾品を見出して展示したものであります。画像日系三世のデルフィン・ヒラスナ(Delphine Hirasuna)さんという方が、2000年に母上を亡くされて遺品を整理した時に発見した品物がもとなんだそうですありますが、その後多くの人から「作品」を提供してもらい、それらを著書にまとめ、さらに展覧会を催したのだそうです。大好評を得てKHKの『クローズアップ現代』がとりあげ、ついに今年から約一年の日本での展示が実現したのでありますが、胸を打たれること間違いなしであります。入場無料でございました。

このポスターが会場の目印であります。

つまり、強制収容所が生み出したという点では『我慢の芸術』なんでありますけれども、これをデルフィン・ヒラスナさんは人間としての尊厳につながる大切な芸術として高く評価しようとしたのであります。厳しい生活の中で作られた品々から、それを生み出した人々の精神を出来る限り汲み取り、その品々を展示することによって多くの人にその精神を味わってほしいということなんでありますが、アメリカのマイノリティの歴史に光を当てた輝きが無頓着に生きている私なんかにもびんびんまぶしく伝わってくるのであります。何となく晩秋の一日に上野公園でぶらぶらしようと思って出かけたんでありますが、びっくりするほどの収穫を得てしまったようであります。おそらく、展示品はヒラスナさんの収集品のほんの一部であり、その向こうに消耗したり朽ちたり、捨てられた多くの品物の存在がほの見えまして、それらを生み出した人々の汗とか笑いとかため息を感じることができるはずであります。願わくば、これらが生み出された日々の生活を映画として誰かまとめていただけませんでしょうか。私の脳内には、感動のドラマが渦巻いて、一篇の良質の映画を見たような気分が生まれました。

   さて、『源氏物語』も第37帖「横笛」の巻を先程読了です。

「若菜上」の巻から第4シーズンに突入したということを前に申しまして、現代語ですらすら読んでくるとそのことを非常に強く感じるのであります。登場人物の世代も、この巻で薫や匂の宮がしっかり登場して来まして、光源氏の世代は次第に背景に退く感じであります。主人公は明らかに夕霧が務めていまして、その子供の世代がうじゃうじゃいるというよ画像うなにぎやかさが特徴であります。どうやら、『源氏物語』そのものが世間に受け容れられ、それまでの登場人物を使いながら原作者・紫式部が今まで描いていなかった面白い場面を読者に提供するというような、『水戸黄門』とか『銭形平次』とか、あるいは『ドラゴンボール』やら『サザエさん』的なレベルに到達したのかも知れません。

美術館の入り口をソメイヨシノ越しに。

「横笛」の巻は現代語で25ページでありまして、あっという間に読み終えるような長さでありますが、内容は充実しております。柏木の死から1年後という設定でありまして、光源氏は49歳を迎えておりまして、その子供である夕霧はすでに28歳の壮年期を迎えているのであります。柏木の死の直前に生まれた薫は2歳でありますが、これは数え年ですから今で言えば1歳のお誕生日を迎えたばかりであります。後半にはこの薫が明石の女御が生んだ皇子たちと交じっている様子も出て来まして、光源氏の孫の世代に薫が紛れ込んでいる様子が描かれているのであります。この巻で夕霧は薫の出生の秘密をだいたい突き止めるという運びであります。夕霧が秘密を解き明かしていく様子を、事実を知っている読者が眺めることになりまして、それとともに幼なじみと結婚した夕霧の家庭生活の実態が暴露されるのでありますけれども、そのあたりが秀逸であります。

   読者が秘密をすでに知り、登場人物が秘密に迫る面白さ。

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