Only I know all.ついに漱石『こころ』を読み通す(7)

本日は8月2日でありまして、やはり何でもない日の一つでありましょう。小学生の頃、宿題を7月中に片付けまして、8月の声を聞くともうすることがない状態を堪能していたわけであります。だいたいラジオ体操も、何らかの学校行事、特に臨海学校などというものは7月中に終わっておりまして、後はお盆を待つだけというのが普通だったのであります。冷涼な高原に育ちましたので、川で泳ぐのは7月中のことでありまして、8月になるとすでに水は冷たくて、泳ぐのには適さなかったのであります。よって、子供同士は疎遠になり、親に連れられて祖父母の家に出かけるのであります。都会と違って夏休みは実質30日くらいでありまして、お盆が終わった頃に登校日が設けら画像れていて、二学期の予定などを聞かされたんであります。以上の様なスケジュールですから、8月の上旬がもっとも暇でしょうがない、退屈を持て余す時期だったのであります。今年は、本日が旧暦の七月七日、いわゆる七夕(たなばた)でありまして、それじゃあ七夕って何なのかと思ったら、自分の頭の中には何も存在しないのであります。言葉ではあると言われていますが、実はもう私の生活の中では七夕はまったくの架空の行事なのです。

屋根と雨どいの間に侵入していたサルスベリ。

七夕は中国渡来の伝説でありまして、牽牛星と織女星がいちゃついてばかりいるので、神様が怒りをなして二人を引き離したというのが七夕の基本でありますが、その割には細部がよく分からないのでありまして、解説のある本などを見ても雲をつかむような、なんとなく頼りないところがあります。織女星は機織りをしなければならないのに、それを怠けたというのが処罰の理由でありまして、ちゃんと機織りを務めなさいと言うのでありますから、女性に対する嫌味な話でありましょう。日本の場合、この織姫が実は瓜子姫ではないかという話が、柳田國男から出ておりまして、いきなりそう言われても困るんですが、知っている人は知っていることなのでありましょうか。瓜子姫の伝説というのも、けっこうテレビの人形劇や舞台劇で上演されることが多いのでありますが、あれにはアマノジャクという鬼が出てきまして、瓜子姫が殺されるのが東日本、瓜子姫が柿の木に縛られるのが西日本と、大きな違いがあるそうです。東日本の場合は、アマノジャクが瓜子姫の皮をはいでなりすましを図るそうで、いやはや恐ろしいの何の。すさまじいだけに、実は皮をはぐほうが実話だったのではないかと疑うのであります。疑うのは私だけでしょうけれども、ともかく猟奇的な行動するのが東日本で語られるアマノジャクなのです。

  夏目漱石『こころ』の下巻・「先生と遺書」もはや第51節なのであります。

アマノジャクというのが、瓜子姫の恋のライバルなんだそうでありまして、ここには男一人に女二人の三角関係の修羅場が用意されていたようであります。さて、そうすると今世間で問題となった高校一年生の事件に、そういう背景はないのかどうかということなのでありますけれども、もはや真実は藪の中、だれにも本当のことは容易にわからないはずなのであります。『こころ』の場合も、先生の遺書を読む限りは友人「K」は自殺でありまして、それは動かな画像いような気がしますが、男女を入れ替えて同じ三角関係だとこれを考えてみると、この友人のポジションは瓜子姫なのかそれともアマノジャクなのか、非常に微妙であります。告白する先生の語り口は自分がアマノジャクであって、瓜子姫である友人に危害を加えたようにも読めるんですが、お嬢さんを巡る人間関係を考える限りでは、友人「K」のほうがアマノジャクだったようにも思うのであります。先生を被害者と考えてもいいでしょうか。

セミの抜け殻があったのはこんな柱のところ。

第51節で奇異に感じるのは、友人「K」の自殺を報じる新聞があったという点でありまして、つまり前途洋洋の帝大生の自殺という点で、明治時代ならば報じる価値があったのかもしれないのであります。葬式が済んですぐに残された三人は引っ越したとありまして、さらに二か月後には先生は大学を卒業し、お嬢さんと結婚したというのでありますから、お嬢さんを巡る三角関係の結末は、一方には残酷であり、一方にはめでたい幸福を生んだということになるでしょう。結婚後にお嬢さんと言いますか、もちろん先生の奥さんである「静」さんでありますが、二人で「K」の墓参りをしようと申し出たそうですが、先生は非常に動揺したようであります。こういう経緯があって、果たして結婚した甲斐があったのかどうか、あまり甲斐が無かったとすれば、先生が死を選んでしまうのも致し方ないのかもしれないのであります。先生が遺書を書いて主人公に送り付けるというのも、少々人の心には疎くとも、主人公であれば先生の苦しみが分かるかもしれないということのようであります。

  もらったほうは、とんでもない長々とした遺書を持て余したことでしょう。

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