The white gardenia resembles her.旅路の果てまで。(5)

うっかり医学の専門雑誌を読みふけるなんてことは、滅多にないことでありますが、時と場合によっては思いがけない理解をもたらすことがあるのでありましょう。もやもやしていたことが、霧が晴れるようにすっきりするということは、なかなか得難い体験ですから、素人なりの読書感想文をしたためてみたいと思います。ただし、どこの雑誌のいつの特集かと言うことや、記事を書いた専門家の方の名前は伏せてみたいと思います。事は重大なことでありまして、素人が知ったかぶりをするわけですから、ほとんど作り話と思ったほうが読む人の身のためであります。始まり始まり。自閉症(Autism)が報告された最初は1943年のことでありまして、アメリカのレオ・カナー(Leo Kanner)という精神科医によるものだったのであります。カナーが偉いのは症状を詳しく分析しまして、幼児のうちから非常に問題行動のある一群を発見したことに尽きるのでありましょう。今に至るまで原因は不明ながら一貫してカナーの指摘は支持されておりまして、学校や社会の中で孤立することの多い少年少女をひとくくりにする概念を持ち込んだのであります。日本だったら、今だってそんな概念を見つけられなかったかもしれないということは肝に銘じておくべきなのであります。さて、「自閉症」に関する転換点は、1981年でありまして、この年イギリスの精神科医であったローナ・ウィン画像グ(Lorna Wing)が、アスペルガー症候群という自閉症に関わる新しい知見を紹介したのであります。ウィングは、1944年にオーストリアの医師であったハンス・アスペルガー(Hans Asperger)がカナーの自閉症とは似て非なる高機能の不適応の子供の存在を指摘していたことを紹介しまして、自閉症の周辺に症状の違う高機能の一群が存在するのではないかということを提唱したのであります。

季節外れのツツジの開花模様であります。

自閉症は発見されてから70年が経過したんですが、いまだに原因が分かっていないのでありますけれども、さらに自閉症なのかアスペルガ―症候群なのかという問題や、低機能だとか高機能だとか、抽象的な言葉のやりとりでありますから、世間とお医者さんなどとの間に大きな理解の溝があるようであります。親の育て方が悪いとか、虐待があるとか、夜の間つけっぱなしの常夜灯のせいでああなるのだなんて俗説までありまして、しっちゃかめっちゃかぐちゃぐちゃなのであります。「自閉」という言い方は、この自閉症のせいで広まりましたが、別に引きこもりは「自閉症」の特質なんかじゃないのであります。「アスペルガー」もウィングさんが発見者にちなんで名付けたわけで、「高機能な自閉症」のことですけれども、別にそれは才能豊かというような特別扱いを意味しているのではありません。IQ70以下が低機能、IQ70以上が高機能と言うだけで、IQ70というのは日本では小学校に入学できる最低ラインをクリアしているだけのこと、優秀だなんて意味はないに等しいのであります。そして何より障害の話でありまして、一般人の性格や行動特性の比喩にするようなものではないのであります。2013年アメリカの精神医学会では、自閉症とアスペルガー症候群の線引きを見直しまして、すべて包括して自閉症スペクトラム(じへいしょうスペクトラム・Autistic Spectrum Disorder)と呼ぶことに決めたそうであります。どうしてかというと、アスペルガーの紹介した例を検討したら、どうも全部自閉症とみなすべきだと分かったとか、医者によって診断基準がばらばらで区別をすることに意味がないと分かったとか、障害区分の再検討が進んだ結果、混乱に終止符を打つ方向でまとまったようなのであります。過去の混乱は今後も尾を引くだろうと予測されているわけで、そうだろうなあ、大変だろうとおもうのであります。世間では「自閉症」だって理解されていないのに、そこに「アスペルガー」という謎めいた言葉が加わり、結局原因不明で症状だけが問題と言うのでは、若いお母さんたちは振り回されて終わりであります。

   ローナ・ウィングさんは2014年6月6日に亡くなったそうでありまして、享年85歳の生涯でした。合掌。

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