和久井映見 シングル レビュー 一覧(2)

⑤ 92・10・25
 〇 抱きしめたいのはあなただけ
      
作詞;戸沢暢美 作曲;林哲司 編曲;鳥山雄司

*この曲は、第5番目のアルバム「だれかがあなたにキスしてる」にそのまま収録されていますが、編曲を変えて第6番目のアルバム「パーリー」に再録されています。シングルバージョンは、最初にサビの部分が入りますので、胸いっぱいの幸福感が溢れ出る感じが圧倒的です。リミックス版は、その出だしのサビを抜いて、落ち着いた始まりになっていますが、後半曲想を盛り上げる演奏の工夫が行き届いていて、聞き惚れます。どちらも捨てがたい。和久井映見さんのイメージにぴったりな女性の純愛の歌ですが、どうして世間はこれを見逃したのか不思議な感じがいたします。いえ、見逃していたのは私だけのことで、知っている人はよく知っていたんでありましょう。彼女の代表曲と言って、間違いないと思います。コーラスが何とも言えない絶妙のタイミングで入りまして、ボーカルの歌詞を補足するところが聞き所です。カラオケで女性が歌ったら、盛り上がると思う。作曲の林哲司氏がカバーして、男性バージョンを歌っています。これもいい。薬師丸ひろ子さんの「メイン・テーマ」には、作者の南佳孝氏の「スタンダード・ナンバー」というバージョンが存在しますが、それと同じようなケースで、同じ曲に少し歌詞を変えて作曲者が歌っちゃったという例です。両方聞き比べると場面が立体化して、楽しい競作になっているということなのです。10点

※香川県にあるレオマワールドの1990年代クリスマスの時期のCMに、この曲が使われていました。Twitter上に映像も出ていて、和久井映見さんの名前と曲名がクレジットされています。

 c/w 涙になりたかった涙
      
作詞 田久保真美・康珍化 作曲;芹沢廣明 編曲;門倉聡

*こちらは、失恋の歌。泣いちゃうと負けだと思って、泣くのをがまんしたけれど、他の女の子に彼を奪われちゃったという、まあ恋愛ソングの定番の曲想であります。デビューしてしばらくするとアイドル歌謡に出て来るパターンでありまして、カップリングの曲としてはとしては自然かもしれません。80年代前半なら、秀逸の出来でヒットしたと思うのですが、90年代はアイドルが受けなくなりましたから、こんなふうに目立たないところに入れるということなのでしょう。思うのは、ボーカルの音がもうちょっと前に出るようにしてくれないと、和久井映見さんの甘くて暖かい声がバックの演奏で聞き取りにくいような気がします。これも、第5番目のアルバム「だれかがあなたにキスしてる」に入っています。ちなみに、この頃のアルバムには、和久井映見さん本人が作詞した曲が2曲ずつ入っていて、なかなかの出来です。それらも水準以上なので、アルバムを聞くのがいいかもしれません。9点


⑥ 93・7・25
 〇 さよならを言わなかった
      
作詞;康珍化・本木紀子 作曲;林哲司 編曲;門倉聡

*6番目のアルバム「PEARLY(パーリー)」に収録されている曲。”pearly”というのは英語の形容詞でありまして、「真珠のような」「真珠で飾った」という意味であります。さらには、「非常に貴重で美しい」「声が朗々として響く」ということですから、これはパーリーなアルバムだよとアピールしているのかもしれません。この曲は、ピアノの前奏からはじまり、丁寧なボーカルで昨年の夏の短い恋を歌っています。サトウキビと渚が出て来るので、恋の舞台は沖縄、そして戻って来たのは羽田空港。ならばなんとなく思うのは、夏に向けてCMにすることを意識して作られたものかもしれないということ。ひと夏の恋を回想して甘い思いに浸るというのもアイドル歌謡では定番であります。ただ、どうしてその後別れ別れなのか、そのあたりの手掛かりがあると、聞いている方としてはもっと浸りきれるかもしれません。幼馴染の恋なのか、旅先で知り合った人なのか、それによって話が違ってくるかと思うんですが、残念ながらそこは明らかにならないまま、主人公がその恋を大切に思っている思いだけを切々と訴える歌です。太田裕美さんの「夕焼け」という、ひと夏の恋に晩夏に涙する歌を連想しました。あれもこれも、どっちも夏を回想する歌としては、なかなかいいと思います。9点

※ 2番の歌詞に「背伸びした恋だから、背伸びした別れ方」とあるので、歳の差があるのかもしれません。主人公は若くて、高校生か大学生。とすると、相手は先生とか大学教授、あるいはプロのカメラマンというような設定でありましょう。和久井映見さんのドラマなどの設定の中に、そういう設定があったかどうか。なくても、女の子が大人の男性に首ったけという純愛志向の歌には間違いないのであります。

 c/w どこにいてもだれといても
      
作詞;康珍化 作曲;石川Kanji 編曲;門倉聡

*サントリーのビール「モルツ」の宣伝に和久井映見さんが起用されたのが92年から94年と言いますから、世間が彼女をしっかりと意識したのがその頃と言うことになるでしょう。今だって、ビールを飲み干して「うまいんだなあ、これが」という男性はめちゃめちゃ生き残っていることでしょう。モルツという銘柄は絶滅した(ザ・モルツはまだあります)ようですが、言葉はもうしばらく記憶に残るはずであります。この歌も第6番目のアルバム「PEARLY」に入っている歌ですが、まったりとしたリズムで、夏の午後にちょっとビールを飲んじゃったというような気分にぴったりの雰囲気で、歌詞の内容は意識している彼のことで頭の中がいっぱい、はちきれそうという内容であります。7点

⑦ 94・3・25
 〇 結婚しないでね
      
作詞;康珍化 作曲;石川Kanji 編曲;門倉有希

*この歌は、7番目のアルバム「あなたがわたしにくれたもの」の中に収められています。それも配置はトップバッターとなっています。このアルバムは、それまでアルバムなどにあった曲と未収録の曲が混じっているという、不思議な作りになっています。シングル発表の度にアルバムも作成していた流れの中で、今回も頑張ったんだけど、曲を揃えるのが、残念、間に合わなかったということかもしれないのであります。ふと、想像をたくましくすると、女優としてのお仕事が超多忙になって、新曲をこなす余裕がなくなったのかもしれないのであります。若くて可愛くて、演技派の女優としてはこの時期貴重な存在だったはずであります。引っ張りだこ。よって、大好きな歌の方は歌い手として力を抜かざるをえないし、制作サイドも彼女の女優イメージに合わせて肩の力を抜いた楽曲を提供してみた結果、むしろ互いに鉱脈を掘り出して行く、というようなことが感じられます。この歌は、ちょっと交際を控えめにして傷つくのを回避しながら、将来のチャンスを待つというような感じの、賢い女の子の立ち位置の歌であります。歌詞が、すこし回りくどい内容です。でも、それを現在からみると、歌の主人公がお茶目なキャラクターに仕上がっていて、和久井映見さんのテーマソングみたいな気がします。7点

 c/w カサノバ・サーカス(on the eclipse of the moon)
      
作詞・作曲;CANCAMAY 編曲;門倉有希

*これも、7番目のアルバム「あなたがわたしにくれたもの」に入っていますが、実は2番目のアルバム「LUNARE(ルナーレ)」に出ていた曲で、さらに4番目のベストアルバムにも入っていますから、3度目の正直、ようやく日の目を見たと言えそうな気配。ただし、それまでは、編曲が門倉聡氏だったのがアレンジャーが変更されて、イントロの出だしの部分から違っているけれども、どっちも洒落た雰囲気は変わりません。タイトルの副題”on the eclipse of the moon”は「月食」ってことのようですが、太陽と月が地球を挟んで関係しあう様子に、男女の様子を重ねたのかもしれません。ちなみに、初出のアルバム名の”lunare”はイタリア語で「月」の意味のようであります。それと、この歌は深い関係にあるということがわかります。ともかく、軽快なリズムをバックに、和久井さんのボーカルが妖しい雰囲気を盛り上げるのであります。デビュー時にすでに彼女のためにできていた曲の可能性もありまして、ただ最初からこれでは完全なプロフェッショナルの歌いっぷりでありますので、世間に対して出し惜しみをしていたような感じですね。シングルの初期の4曲はこの路線だったわけで、それらをどうして歌わせたかの謎も解けてしまうわけです。この歌い手は、実は最初から相当うまかったのではなかと思うわけです。洒脱で、歌いっぷりも自由自在。この歌で勝負するタイミングを逃したとしたら、かなりもったいない感じ。憎まれ口をきくと、「結婚しないでね」をカップリングに回した方がよかったんじゃありませんか。これはもう、文句なく10点。

⑧ 94・7・10 
 〇 キスしたい
      
作詞;康珍化 作曲;後藤次利 編曲;門倉有希
※日本テレコム0088”もったいナイでしょ”CMイメージソング

*この曲は、第8番目のアルバム「愛しさのある場所」に収めれています。1994年は3月25日にシングル7番目の「結婚しないでね」をリリースしていますから、約3か月でこの「キスしたい」を続けて短期間で出したのであります。そして、11月2日に9番目のシングル「赤と緑のリボン」を、これでもかと繰り出しまして、和久井映見ワールドを掘り当てた勢いで、攻勢を掛けたのは明らかでありましょう。ただし、もうバブル崩壊はひたひたと世の中に浸透し、音楽の世界はJ-POPと称する不思議な言葉の呪文に操られて、何だか妙なことに転じてゆくわけであります。フォークソングの中から、シンガーソングライターの一部がニューミュージックとくくられ、そして何となくインターナショナルに通用しそうな音楽として衣替えしてゆくわけで、80年代にあれほど隆盛を極めたアイドル歌謡の世界がぐんぐん縮小してしまった、というふうに今ならくくれることでしょう。歌番組が減少し、昔は歌謡番組で出てくるのはスターだったんですが、それがやがてアイドルとなり、団塊ジュニア世代の成長とともに人気だったのに、一気にしぼんで行きました。そういう時代に、歌番組に出演しないという歌の上手い女優さんは埋没したのかもしれません。和久井映見さんの歌を見ていると、シングルよりもアルバムが冴えているわけで、この事は80年代の薬師丸ひろ子さんや斉藤由貴さんでも同じであります。バブルがはじけていなかったら、ふんだんなお小遣いをアルバムに注ぎ込んだはずなんですが、もうそんな余裕がなくなったということかもしれません。この曲は、本当にもったいない。たぶん、今の和久井映見さんが歌ってもいいと思う。10点

 c/w あなたはひとりだけしかいない
      
作詞;松井五郎 作曲・編曲;岩代太郎

*この曲も、第8番目のアルバム「愛しさのある場所」に収めれています。「キスしたい」が、コミカルにキスを迫る明るいコミックソングだとすると、こちらは運命の相手に出逢えた喜びを切々と訴えるような、ぐっと落ち着いた歌であります。和久井映見さんの声がストリングスのようにメロディーを奏でて、聞いていると至福のひと時を過ごすことが出来ます。まあできることなら、自分の葬儀の時にはこの歌をずっと繰り返し流してほしいものであります。会葬者が、ふと涙を落とすのが目に見えるようであります。アルバムと編曲が違っておりますが、編曲しているのは同じ方で岩代太郎さん、アルバムはアコスティック・バージョンであります。どちらも、いいと思います。なお、作詞の松井五郎さんのWikipediaでは提供者の欄に和久井映見さんが抜けております。10点

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