今こそ聞きたい和久井映見 アルバム名曲選(1)

歌は世に連れ、世は歌に連れ、という言葉がありまして、なるほど名言であります。そう言えば、子どもの頃には「一週間のご無沙汰でした」という司会者の名セリフで始まる「ロッテ歌のアルバム」という番組がありまして、そこで流行歌を聞く、スターを見るというものでした。その後、「スター誕生」というオーディション番組がはやりまして、そこから中三トリオなどというものが生まれたのであります。それ以外にも、プロまで参加した勝ち抜きの番組があったりして、スターを番組の中で作るのも流行ったのであります。それと同時進行で、シンガーソングライターが出現して、アルバムが売れたりしたのであります。

それらも遠い昔でありますが、人間は記憶に縛られ、さらには記憶を捏造したりするので、人の頭の中はおそらく誤った情報でいっぱいであります。若い人に演歌が好きだろうと思われることが多いんですが、いえいえ、あれはけっこう後になって出て来たものであります。アイドルも低調だった時もありました。自分にとって楽しい歌を見付けるというのは、意外と難しいものであります。古いものが手に入らないだけではなくて、新しいものも耳に届かないことだってあります。いろんな偶然が重ならないと、素敵な花園には辿り着かないのでありましょう。

昔通勤の途中で、畑の中の近道を見付けまして、便利だなあと思いました。ある日、葉っぱのない、茎だけのピンクの花がその近道の真中に突然出現して、本当に心の底から驚きました。造花を誰かが挿したのかと疑いましたが、どうやらもともとそこに球根があったのであります。「夏水仙」という可憐な花であります。

それとは別に、仕事場から自転車で帰る途中の住宅街で、庭を公開しているお宅を見付けて入ったら、普通の住宅の庭が全部チューリップ畑でありまして。それを見るための通路まで家の周りに作り上げてあって、びっくりするような光景でありました。花の季節に、そこを通り道にしないと出会えなかったわけで、一度きりのことであります。人生と言うのは、そんなことの繰り返しであります。

では、和久井映見さんのアルバムから、問題作と言えるような名曲をここで紹介いたします。評価の仕方は、シングルの時と同じで、最高点が10点であります。

① Moon(ムーン)
    
作詞;戸沢暢美 作曲;亀井登志夫 編曲;門倉聡
※第1番目のアルバム「FLORA(フローラ)」の1曲目。第4番目のベストアルバム「ふたりは夢であいましょう」にも入っていて、その3曲目。
♪傷つくたび優しさを知るのは やさしさが忘れる手段だからね

この最初のアルバムが発売されたのは、1990年の7月21日のようです。和久井映見さんがデビューしたのは1990年の1月1日でありまして、そのデビュー曲は「マイ・ロンリー・グッパイ・クラブ」ですが、それもこのアルバムの中に入っているんです。そちらはアルバムの4曲目となっています。デビュー2作目は1990年の9月5日発売でありまして、その曲は「天使にスリルをおしえてあげて」なんですが、実はその曲はベスト盤以外のアルバムには入っていないのであります。そういうことを踏まえて考えると、アルバム制作とシングル制作の間に若干の隙間があって、いろいろと空想してしまうところがあります。この「Moon」をデビュー曲にするとか、これをシングルカットして2作目・3作目にするという方向はなかったのかどうか。しかし、この歌の和久井映見さんは、いかにもロックバンドのボーカルでありまして、歌手活動後半のシングルが紡ぎ出すような、ほんわかあったか路線とはまったく異質であります。ただ、この曲のお終いに、もやで包み込むような柔らかいボーカルも披露されていて、何とも面白い味わいなのであります。三角関係になって、元の女が今の彼女の前で男に恥をかかせるという経験がないと、この歌は理解できないことでしょう。そんな時に今の彼女の気持ちがどう傾くかを歌っているわけで、最後まで聞かないと着地点がわからないので、これはアルバム向きの曲なのかもしれません。8点

② 偶然の旅人
   
作詞;康珍化 作曲;羽田一郎 編曲;門倉聡
※第1番目のアルバム「FLORA(フローラ)」の8曲目。
♪ちちりちりちりち 痛い ロンリー・マイ・ハート

一番の歌詞に「砂漠」が出てきまして、さらに「駱駝の背中」に主人公が乗っているという状況が出てきます。どこかなと思うと、ちゃんと二番の歌詞に「エジプト」がでてきて、さらに「ナイルの水」もでてきますから、まさしく異国情緒を描いているのであります。恋に破れた女の子が傷心をいやすために中東を旅しているというような構図でありますから、昔だと久保田早紀さんの「異邦人ーシルクロードのテーマー」(1979年)であるとか、庄野真代さんの「飛んでイスタンブール」(1978年)などというヒット曲が浮かぶわけであります。薬師丸ひろ子さんにも「星紀行~キャメルの伝説~」(1987年)などというのがありまして、おそらく探せばいくらでも出て来るんですが、和久井映見さんのこれもなかなかいい曲ではないかと思います。バックコーラスがすてきで、これに対してボーカルがのびのびと歌っていますから、これをファンの方が知らないのはもったいない、という気がするのであります。デビュー半年の新人で、このさわやかな歌声はすごいと思うのでありますが、その声はのちのちの和久井映見さんのドラマなんかでもおなじみの声であります。7点

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック