Quick and meat quick at work.それも芸の内。(4)

物の値段というのは、どういうふうに決まるのか、ということを考えると夜も寝られないのであります。じゃあ、考えているんだと思われそうでありますが、いえ、寝られなくなりそうだから、つとめて考えないわけであります。

進学して東京に出てきまして、最初は学生寮に入り、そこから遁走して、兄の厄介になったんですが、しばらくして下宿を探して、アパートの一人暮らしをいたしました。近所のちっちゃなスーパーに行って、キュウリなんかを買うんですが、これに抵抗があったのであります。えええ、キュウリが一本50円かよ、というわけでありまして、あれは畑の土の上に転がっているものでありまして、子どもの頃には好きでも嫌いでもありませんでしたが、食料ではあっても、値段の付いたものを買ってくるわけではないので、驚いたわけです。大根にも、ニンジンにも、そしてキュウリにも値段があるなんて、摩訶不思議なわけです。

ただ、こうして老人になると、田舎の畑の作物も、それなりに原価があり、手間暇をかけるわけだから人件費も加わるわけで、天の恵みだけで野菜が手に入るわけではない、と分かるのであります。野菜は種を買ったり苗を買ったりしまして、そこに化学肥料などを投入するわけで、実は案外値の張るものなのであります。我が家には二畳くらいの広さの家庭菜園がありますが、もう何も作らないのであります。トマトや大根を作ると、投資したのと同じくらいの収穫しかないのであります。例えば、300円のトマトの苗を3個買ってきて、10個くらい実を収穫するのが精一杯でありますから、900円で10個のトマトを買うわけで、だったらスーパーで買う方が安上がりなのであります。大根なんかは、貧弱なものが3本くらいできるだけで、種代の方が高くつくのであります。これは、肥料をけちるからでありますが、しかし二畳ばかりの家庭菜園にちょうどのサイズの肥料なんて売っていないのであります。

売っている野菜は、農家が競って作って売りますから、競争によって品質の悪いものが淘汰され、そして豊作で供給が需要を上回れば、値段は下がるのであります。今なら、大根は一本200円、ニンジンは三本で200円、キュウリは4本で200円くらいであります。それくらいを、家族四人くらいで消費するとちょうどよいわけでありまして、新鮮なうちにきれいに食べつくすことでしょう。家庭菜園は安定供給ができませんので、やはりあれは高尚な趣味でしかないのであります。

ふと思うのは、都会の庭を回って、ミカンや柿の木などを、契約して収穫して、それを売ったら、結構儲かるのではないかと思ったりします。ご近所を見ると、果実は収穫しないで野鳥の餌になっております。しかしそれも、高く売れるとわかったら、住人は欲が出て安くは譲らなくなることでしょう。

   リンゴ一個が200円というのを見ると、変だと思う。

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